11月23日、国立競技場で天皇杯決勝が行われ、ヴィッセル神戸が2度目の優勝を果たした。ガンバ大阪はエース宇佐美貴史を負傷で欠いた影響が大きく、クラブ通算10個目のタイトルを目前で逃した。

上写真=天皇杯決勝で敗れて肩を落とすG大阪の選手たち(写真◎小山真司)

■2024年11月23日 第104回天皇杯決勝(観衆56,824人@国立競技場)
G大阪 0-1 神戸
得点:(神)宮代大聖

2日前の非公開練習で負傷

 試合開始2時間前、両チームの先発選手およびベンチ入りメンバーが発表された。そこにG大阪の背番号7、宇佐美貴史の名前はなかった。時を同じくしてG大阪からリリースが出され、宇佐美が「右ハムストリング肉離れ」と診断されたことが発表された。決勝の2日前、21日に行われた非公開練習での負傷だった。

 今季のチーム最多得点者であり、キャプテンでもある宇佐美の欠場は、G大阪サポーターはもちろんのこと、対戦相手にも驚きを与えた。この日、神戸の左SBとして先発した元G大阪の初瀬亮は、「宇佐美くんがキーマンであるのは間違いないけど、自分たちがやることは何も変わらない、という話をしていました」と神戸側のロッカールームの様子を明かしつつ、「自分は(G大阪アカデミーの)後輩ですし、今でもご飯に連れて行ってくれる先輩なので、複雑な気持ちはありました」と打ち明けた。

 G大阪の選手たちによると、21日のトレーニング中に宇佐美が足を痛めた瞬間、その場に居合わせた誰もが大きなケガであることを悟ったという。チームに動揺を与えたのは間違いない。それでも選手たちは「貴史くんのためにタイトルを取ろう、という話をみんなでしていた」(福岡将太)と、アクシデントをきっかけに気持ちを一つにした。

 クラブ通算10個目のタイトルが懸かった大一番の直前、ロッカールームで宇佐美は涙ながらに思いを語ったという。そして最後に「楽しんで、勝ってきてほしい」と仲間を送り出した。しかし、エースを欠いた影響は大きく、好機を作りながらも無得点に終わり、タイトルをつかんだのは数少ないチャンスを物にした神戸だった。CBとしてフル出場した福岡は「貴史くんが居ないとダメだと思われても仕方がない」と、0-1という結果を受け止めた。

 決勝で宇佐美の代わりにキャプテンマークを巻いた中谷進之介は「2日前に貴史くんがダメとなったとき、チームを引っ張るのは僕の役目だと思った。今日、僕は貴史くんにカップを掲げてもらうためにと思ってやりましたが、力不足で申し訳ないという気持ち」と悔やみ、ゴールマウスを守ったGK一森純は「俺は正直、絶対に貴史のために勝とうと思っていました。それをもっとうまく伝染させられるようにしないといけないと思ったし、このピッチに立つというのはどういうことなのか、もっと本気で考えないといけない」と厳しい口調で語った。

 この日、登録メンバー外だった宇佐美は、試合後のミックスゾーンに姿を現さなかったため、今の心境を聞くことはできなかった。しかし、誰よりも悔しかったのは本人だろう。決勝のピッチに立てなかったこと、そしてサポーターにタイトルを届けられなかったこと。試合終了後、涙を流しながらスタンドに向かって頭を下げる姿が、その思いを代弁していた。

取材◎多賀祐輔