ヴィッセル神戸が2019年度以来の優勝を果たした天皇杯。11月23日、ガンバ大阪との決勝で勝利に導いたのは宮代大聖のゴールだった。今季、J1王者に加わった新戦力がその成長を見せつけるゴールになった。

上写真=64分、宮代大聖がこぼれ球をていねいに押し込んで、これが決勝点に(写真◎小山真司)

■2024年11月23日 第104回天皇杯決勝(観衆56,824人@国立競技場)
G大阪 0-1 神戸
得点:(神)宮代大聖

「まだ終わっていないですから」

「信じて走ったらこぼれてきました。みんなに感謝したい」

 勝利をもぎ取るゴールは64分、宮代大聖の右足から生まれた。

 GK前川黛也が前線に大きく蹴り込んだボールを、佐々木大樹が相手を背中でブロックしながら落とした。サポートした大迫勇也が時計回りに回って体勢を崩しながらも左足でかき出すように左前へ。走ってきた武藤嘉紀が抜け出して左足で中へ送ると、DFに当たってこぼれたボールが宮代の目の前にこぼれてきた。右足でていねいに押し込み、これが優勝を決めた決勝ゴール。

「最初にサコくん(大迫)がヨッチくん(武藤)に出したあと、中でクロスをもらおうと思ったんですけど、ヨッチくんがシュートを選択して。観客の声もあってなかなか声も届かなかったと思うけれど、そこで受けようとしたことであそこにポジションを取れたと思うので、結果論ですけどよかったかなと」

 ボールの落下地点にいち早く入って相手が体をぶつけにくるタイミングをよく見て背中に当てさせた佐々木の体の使い方は見事で、サポートした大迫と左に回った武藤の「時間差ラン」で相手のスペースをまんまと突いた。そして、その間にゴールの匂いを嗅ぎつけて右から中央へ走ってきたからこそ、宮代が「そこ」にいた。

「みんなで取ったヴィッセルらしいゴール」と表現したのは決めた本人。劣勢を一瞬でひっくり返す集中力は、まさに強いチームのそれだった。

 このシーンだけではない。90分を振り返っても神戸の強さは際立った。いや、むしろ、宮代も言うようにガンバ大阪の攻撃を長い時間にわたって受け止める「我慢の戦い」だった。ただ、それを耐え抜いて1点を取って、そのままタイトルへと駆け上がる戦いそのものが強かった。

「今日はガンバも非常にいいサッカーをして前半は苦しみましたけど、そこで焦れずに戦えたのが良かった。失点をゼロに抑えていれば必ず自分たちにチャンスも来ますし、そこで一発、仕留められるかどうかです」

 その一発を、宮代が仕留めてみせた。

 前回のこの大会は川崎フロンターレの一員として優勝しているから、「個人連覇」を自らのゴールで達成したことになる。だが、「それは気にしていなかった」ときっぱり。神戸の一員として手にした初めてのタイトルである価値を喜んだ。

 その川崎Fから神戸に移り、競争しながらポジションをつかんで、リーグ戦ではキャリアハイの10ゴールをすでに決めている。そのJ1では首位を走り、残る2試合に連覇がかかっている。

「まだ終わっていないですから、ここでうれしい気持ちもありますけど、Jリーグを取らなければいけないので、切り替えて頑張りたいなと」

「優勝がかかっているような大事な試合で自分が点を取れるか、チームを勝たせられるか、それはフォワードとしては非常に大事なこと。そこで自分の価値も上がってくると思います」

 天皇杯優勝だけでは満足できない。J1連覇、そして2冠へ向けて、苦しみながらも勝利をもぎ取り続けるこのチームで、残り2試合も宮代がゴールを狙う。