関東大学1部リーグの法政大がJ1のG大阪に完勝し、4回戦へ駒を進めた。序盤から走力で上回り、ゲームを掌握。24分に大西遼太郎のゴールで先制する。1点リードで折り返したあとも、勢いが止まらなかった。途中出場の倉田秋、宇佐美貴史らもシャットアウト。70分には森岡陸が追加点をマークし、勝負を決めた。G大阪は2年連続で大学チームに敗戦。前年度インカレ王者の法政大は、いかにして金星をつかんだのか。

上写真=G大阪戦で素晴らしいっプレーを見せたを法政大の大西遼太郎(写真◎REIKO IIJIMA)

■2019年8月14日 第99回天皇杯3回戦
 法政大 2-0 G大阪
 得点者:(法)大西遼太郎、森岡陸

遠藤さんと戦うのを楽しみにしていた(大西)

 幸運が転がってきたわけでもなく、相手に不運が起きたわけでもない。この日の西が丘では、ただただ法政大の強さが際立った。試合後、ぶぜんとした表情で引き上げてきたG大阪の日本代表GK東口順昭は、素直に敗戦を認めていた。

「相手は勢いがあったし、シンプルに(法政大に)やられた。こっちがフィジカル、技術の差でいなそうとしても、それをやらせてもらえなかった」

 守護神の言葉がすべて。法政大のハイプレスは面白いようにはまった。恐れることなく最終ラインを高く設定し、前線から徹底して相手のボールホルダーを追い回した。縦パスが出てきたところでガシャンと音がするくらい激しくボールにアタックし、球際の勝負で勝ち切る。奪ったボールは素早く丁寧に攻撃につなげ、何度もG大阪のゴールに迫った。4日前には大学のリーグ戦をこなしており、体力的に余裕があったわけではない。G大阪の対策は実質2日ほど。それでも、走力で相手を圧倒した。

 遠藤保仁や井手口陽介から何度もボールを奪ったボランチの大西遼太郎は、充実感した表情で試合を振り返った。

「試合全体を通して、僕の特長を出せたと思います。遠藤さんと戦うのをめっちゃ楽しみにしていて、実際ボールも取れてうれしかったです。こっちは必死だったので、誰から奪ったかはあまり分からなかったのですが」

 その力強いボール奪取には会場から何度もどよめきが起きた。24分には攻撃でも魅せる。鋭い右足の振りから低い弾道でゴール隅に突き刺す。「コースがあそこしか見えなかったので」と照れ笑いを見せながらも、価値ある先制点を挙げたことには納得の様子。

 ジュビロ磐田U-18で育ち、法政大で大きく成長した21歳の4年生。プロ入りを希望しているが、まだJクラブからの内定はもらっていない。この天皇杯は、アピールの場でもある。

「J1クラブと天皇杯で戦ってみて、自分にはまだ足りない部分もあると再認識しました。ただ、やれている部分はあったし、自信にもなりました。少しは(Jクラブに)見てもらえたかなと思います」

 まだまだ満足はしていない。東京Vに続きG大阪まで撃破し、もう怖いものがなくなった。

「チャレンジャーとして戦う気持ちを忘れず、アグレッシブなサッカーを続けていきます。ガンバに勝ったんですから、もういっちゃいます。目標は優勝」

 4回戦のラウンド16は9月18日。対戦相手は8月16日に抽選よって決まる。どこが相手でも、法政大のスタンスは変わらない。当たって砕けろではなく、勝つためにチャレンジする。

取材・文◎杉園昌之 写真◎REIKO IIJIMA

サッカーマガジン 2019年9月号