上写真=表彰式を終えた野津田は、銀メダルを胸にうつむきながら引き揚げた(写真◎福地和男)

 初めて天皇杯決勝に進出し、J1昇格後のクラブ初タイトルを狙った仙台だが、序盤に負ったビハインドを最後まではね返せずに完封負けを喫した。攻撃をリードしながらもネットを揺らせなかったFW野津田岳人は試合後、悔しさをあらわに。広島からの期限付き移籍期間が満了する来季以降についてもコメントした。

直接FK3本も決められず

 試合後、取材エリアに現れた野津田は「今はまだ何も考えられない。悔しさしかない」と振り返った。FW登録で出場したこの日、最大の武器である強烈な左足を駆使して何度もゴールに迫ったが、チーム最多5本のシュートも実らず。「自分たちのサッカーを出せたと思うし、チャンスがなかったわけじゃない。自分自身もシュートチャンスがたくさんあったけど、すべて外してしまった」と反省ばかりが口を突いた。

 見せ場となったのは後半、58分、68分、81分の3回、直接FKからゴールを狙った場面。最初の2本は同じような位置、ゴールに向かって左寄り、約25メートルの距離からゴール左上を狙ったが、ボールが落ち切らずにクロスバーの上に外れた。3本目はゴールに向かって右寄りから、人壁の上を越えるボールでニアサイドを狙うも、浦和GK西川周作の正面を突く。「キックのフィーリングは良かったけど、FKが3本あったのに1本も決められず、力不足を感じる」と語り、「決勝まで残れたけど、決勝で勝って歴史を作ることは、そんなに甘くなかった」と言葉をつないだ。

 広島からの期限付き移籍で、2016年の新潟、17年の清水を経て、同年途中から仙台でプレー。今季は期限付き移籍期間を来年1月31日まで延長し、杜の都でプレーを続けていた。広島は生まれ育った地元で、ジュニアユースからの生え抜きでトップ昇格を果たしている。去就が注目されるが、この日は「今は何とも言えない。来季以降のことは、しっかり考えたい」と語るにとどめた。初タイトル目前で敗れた悔しさを胸に、来季はどのクラブでプレーすることになるのだろうか。

取材◎石倉利英 写真◎福地和男、高原由佳