鹿島の右サイドバックを務める内田が攻守に躍動する 写真◎Getty Images
天皇杯のベスト8入りを懸けた対決は、両者とも譲らず90分間をスコアレスで終了。勝負の行方は延長戦へと委ねられた。迎えた96分、左サイドで鹿島がFKを獲得すると、レオ・シルバの蹴ったボールがゴール前の誰にも触れることなく、そのままゴールへと吸い込まれる。先制点を奪って優位に立つと、終了間際の117分には三竿健斗のミドルシュートがゴールネットを揺らし、追加点を奪取。延長戦で2点を奪った鹿島が、リーグ戦で首位を走る広島を下し、準々決勝へと駒を進めた。
■2018年9月26日 天皇杯ラウンド16
鹿島 2-0 広島
得点者:(鹿)レオ・シルバ、三竿健斗
犬飼とチョン・スンヒョンを称賛「本当によく頑張っている」
鹿島の勢いが止まらない。ルヴァンカップ、J1リーグ、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)、そしてこの天皇杯と、4つの大会の試合が立て込む過密日程の中で公式戦5連勝を達成。「チームは成長していると思うよ、俺が来たときよりも全然」。そう話す内田篤人の表情には自信がにじむ。
9月1日以来負けなし。だが、前回敗れた相手は、この日天皇杯のベスト8を懸けて戦った広島だった(J1第25節・●1-3)。リーグ戦ではホームでの第3節も0-1で落とし、今季2敗を喫している相手なだけに、「(1シーズンで)同じ相手に3回負けるというのは、鹿島としてはやってはいけないこと。(J1で)首位を走っているチームに、易々と天皇杯でまで負けるわけにはいかない」と、内田は語気を強める。
その言葉通り、広島にほとんどチャンスを作らせなかった。70分にパトリック、延長前半の96分には柏好文といったフレッシュな攻撃陣を次々に投入されるも、内田がけん引する鹿島の最終ラインは動じない。「特にセンターバック2枚(犬飼智也とチョン・スンヒョン)は本当によく頑張っているよ。俺はその周りをうろうろして、危ないところだけちょこっと顔を出す感じ」と、淡々と振り返るも、犬飼は「試合中からずっと声を出してもらっているし、プレーでもそうだし、精神的にもいっぱい助けてもらっている」と、その存在の大きさを強調する。
内田にとって、延長戦を含めた120分間の試合は「前にやったのがいつだったか、記憶にありません(笑)」というほど、久しぶりのことだという。それでも、「120分やれば足がつってきたり、打撲などで力が入りにくい部分とかもあるけれど、そんなことは言っていられない。自分がやらなければ、と思っていた。それに、ホーム(での試合)だし、これだけ多くの人が(延長戦まで)残ってくれていたからね。バスとか、電車とか、(最終出発時刻が)ギリギリだとは思うけれど。だから、今日は絶対に勝たなきゃダメだった」と、試合終了のホイッスルが鳴るまで走り切った。
延長戦に及ぶ激闘を制した鹿島は、ACL、ルヴァンカップ(ともに準決勝進出)に続くベスト8入り。J1では27節時点で首位との勝ち点差が「14」あるものの、内田にとって2009年以来となるリーグ優勝もあきらめていない。
「(狙うのは)四冠でしょ。Jリーグで俺らだけじゃん、四冠を狙えるチームって。だから、トライしようよ。過密日程だか何だか知らないけれど、(鹿島は)そういうチームだと思うよ。4つ取るために、俺も帰ってきたからね」
常勝軍団のDNAは、常にタイトルを欲している。2000年の三冠、2007年から09年にかけての三連覇に続く新たな“史上初”の偉業を成し遂げるべく、ドイツから帰還した右サイドバックはただひたすらに勝利を追い求める。
取材◎小林康幸