ガンバ大阪がバンコク・ユナイテッドとの準決勝を制し、ACL2の決勝進出を決めた。2015年の天皇杯以来のタイトル獲得、2008年のACL優勝以来のアジア制覇まであと1勝だ。相手はアジア最強とも言われるアル・ナスル。決勝に臨む選手たちの思いと見どころをチームを追い続けてきた高村美砂氏が綴る。

上写真=準決勝でキレのあるプレーを披露し、チームを牽引した山下諒也(写真◎Getty Images)

バンコク・Uとの第2戦で山下諒也が躍動

 4月15日に戦ったAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)、ノックアウトステージ準決勝第2戦、バンコク・ユナイテッド戦を3-0で完勝し、クラブ史上初、Jクラブ勢として初のACL2決勝に駒を進めたガンバ大阪。ホームでの第1戦(4月15日)を0-1で敗れていた状況下、かつキャプテン・中谷進之介が出場停止、直前のJ1百年構想リーグ『大阪ダービー』で不動の右サイドバック・半田陸が負傷離脱と、苦しい台所事情で臨んだ一戦だった。だが19分という早い時間に山下諒也が先制ゴールを奪って試合を振り出しに戻すと、39分にもイッサム・ジェバリがPKで加点。リードを奪った後半も主導権を握りながら82分に食野亮太郎が勝利を決定づける3点目を奪って突き放し、決勝進出を引き寄せた。

 この試合で中谷に代わってキャプテンマークを巻いたのが今シーズンの4人のリーダーシップグループの一人、安部柊斗だ。プロキャリアで初めてスタートからキャプテンを預かった中で試合直前のロッカールームではチームに「ガンバの意地とプライドを見せるぞ」と気を吐き、ピッチに向かったという。

「第1戦の結果を受けて、前日は食事会場ではみんなから珍しく『少し、緊張するよね』的な声も聞かれたんですが、宇佐美くん(貴史)が『なるようになるよ』と言ってくれて、また試合前も亮(食野)や秋くん(倉田)が声を出してチームを盛り上げ、引き締めてもくれて、かなり助けられました。試合ではキャプテンマークを預かった責任からも、しっかり引っ張らなくちゃいけないと思って意識的に声を出していましたけど、周りの選手に助けられるばかりでした。直近の大阪ダービーで陸(半田)がケガをしてしまったのもあって、陸や離脱している選手のためにという思いもありました。なんとしても決勝に行きたかったし、とにかく自分の役割を全うしてチームを勝たせられるプレーをしようと思っていました」(安部)

 この試合において特筆すべきは、先制点を決めた山下諒也の存在だろう。今シーズンのイェンス・ヴィッシング監督の『前へ』の意識を強めたサッカーを展開する上で常にキーマンの一人として存在感を示してきた山下は、この日も右サイドを加速。19分にはデニス・ヒュメットのシュートのこぼれ球にすかさず詰めてゴールネットを揺らす。今大会ではチーム最多を数える5得点目。まさに『ACL男』たる勢いでチームを牽引した。

「どの試合も緊張感を持って入っていますけど、この試合前はそれ以上の緊張感があって、いつもと違う雰囲気が流れていました。僕も試合をするのが怖くて前夜は眠れなかったです。なんていうか、相手がどうこうではなくて、勝利を掴むしか許されないぞ、とか、負けることを想像した恐怖で…2年前の天皇杯決勝とも全く違う感覚でした。試合会場に入ってからは『怖さ』がプレーを縮こまらせないよう、そういった感情はシャットアウトして、ずっと強気な発言をしていましたけど、胸の内は穏やかではなかったです。なので、先制点を取れて試合を振り出しに戻せたことで僕自身もだいぶ、気持ちが楽になりました」(山下)

 特にヴィッシング監督のサッカーにおいて、山下の預かる『ウイング』は試合内容の良し悪しを決定づけるといっても過言ではない。だからだろう、直近の『大阪ダービー』ではそこを機能させられなかった悔しさも、この一戦に繋げたという。

「今シーズンは僕らウイングのポジションが高い位置で攻撃をできなかったときは負けていることが多いと考えても、毎試合、自分のプレーがカギになるという責任を常に感じてピッチに立っています。またこの試合では、久しぶりに武流(岸本)が右サイドバックで先発したので。これまでは陸(半田)が僕のプレーに気を遣ってくれていたんですけど、今回は自分が武流に気を配りながらプレーしようと意識した中で、彼といい連携が作れたのもホッとしました」

 一方、守備においては、中谷の欠場を受け、池谷銀姿郎がプロになって初めてセンターバックで先発に抜擢。敵陣でプレーする時間が長かったとはいえ、終始、堂々としたプレーぶりでディフェンスラインに安定をもたらし、無失点に貢献した。

「みんなが連戦でもタフに戦っていた中で自分はこれまでずっと試合に出てきたわけじゃなかったことからも、エネルギッシュな部分を出していかなくちゃいけないと思っていたし、その部分でも90分間、声を止めずにやれました。今シーズン、途中から出た試合はサイドバックを預かってきましたけど、センターバックも長くやってきたポジションだし、しっかり頭の部分も切り替えてピッチに立ちました。これまではクローザー的な役割というか、残り数分、長くても10数分程度の出場だった中で今回(プロになって)初めて90分、ピッチに立ちましたけど、試合の流れを見ながらゲームコントロールするという経験値を得られたのはすごく大きかったです。ただ正直、そこまで攻め込まれるシーンはなかったと考えても、もっと強いプレッシャーがくる相手にどんな対策をして、どう対峙していくのかはまだまだ突き詰めていかなければいけない。今回のように勝って成長するという循環の中でチームとしても自分自身も、もっともっと成長していきたいと思っています」(池谷)