上写真=高井幸大はクリスチアーノ・ロナウドと堂々と渡り合い、ゴールを許さなかった(写真◎J.LEAGUE)
「あと1センチ」という名言
「ゲームで使ってきた選手なので、すごく思い入れはあったし、対峙できて本当にうれしかったですね。試合前に整列しているときは、(橘田)健人くんと一緒に、テレビの人じゃないんだねっ言ったりしてちょっとふざけていました」
いわばファンタジーが現実になった90分で、あのクリスチアーノ・ロナウドと直接対決を繰り返し、アル・ナスルを3-2で撃破してみせた。しかし…。
「今日のプレーは満足していない。個の部分ではチーム全員が負けていたかもしれない」
勝利の直後の興奮状態にあって、まず口にしたのは悔しさだった。クリスチアーノ・ロナウドだけではなく、サディオ・マネ、ジョン・デュランを中心に仕掛けてくる強力なアタックを前に、「勝った」と言い切れない自分がいた。
どこに満足がいかなかったのか。
「実際にボールを持たれた時間が長くて、もっと自分たちが高い位置にいられれば前線からプレスをかけていけたと思うんですけど、徐々に徐々に相手を怖がって後ろに重たくなってしまった。1人で止められない場面がたくさんあって、1人を2人で見るような形が多くなってしまって、前線のタスクが増えてしまった」
ただ、試合直後には反省の弁に続けて「日本のチームらしく組織的な戦いで勝つことができた」とも振り返った。このチームへの絶対的な自信がそう言わせた。
「すごく長いアディショナルタイムでした」という実感を改めて吐き出すほど、しんどいラストを乗り越えられたのも、一体感があったから。その源を言葉にすると、「本当にみんながこのタイトルを取りたいって気持ちがある。それは感じてます」になる。個人的にも、クリスチアーノ・ロナウドとのバトルを終えて「自信になりましたし、でももっともっと成長しなければいけない」とまた一歩、前進した。
その優勝トロフィーが、目の前にある。決戦へ向けて、高ぶる気持ちを手懐けながら、その時を待っている。
「まだ対戦相手もどういうチームか分かっていませんけど、前線に素晴らしい選手もいて、もちろん中盤にもディフェンダーにもいると思います。その選手たちに対して中でやらせないことは大切になると思うし、2試合続けて2失点してしまっているので、自分としては納得いっていません。最後は無失点で優勝できるようにしたい」
この大会を振り返るとき、準決勝直後の高井の発言は象徴的なものとして記憶に残るだろう。それは、普段は何にも動じない20歳のセンターバックが強く力を込めた、この名言である。
「ここまで来たからには気持ちだけだと思う。決勝はあと1センチ、あと1メートル、そんな戦いになると思うので全力を尽くしたい」