上写真=この日も前線でチームをけん引した鈴木
写真◎近藤俊哉

鈴木が動き、セルジーニョが待ち構える

 ハートは熱く、頭はクールに――。常に闘志をむき出しにして戦う鈴木優磨だが、ACL決勝の舞台でも頭の中は冷静だった。

「中に行くと見せかけたら相手は締めるので、そのときに逆サイドが空いたりする。うまくサイドを使えればチャンスになると思っていました。(ペルセポリスのDFは)ボールウォッチャーになりやすい。今日の2点目(セルジーニョ)とか。あれはうまく生かせたかなと思います」

 鹿島の9番を背負うストライカーは当然、相手DFの厳しいマークを受けるが、自身が積極的に動くことでスペースを生み出し、チームの攻撃を活性化させている。ACLでは上海上港(中国)とのラウンド16第1戦を最後にゴールから遠ざかっているものの、前線でボールを引き出す動きや守備でのプレスなど、攻守両面での貢献度は高い。ACLで5試合連続得点中のセルジーニョの活躍も、2トップを組む鈴木の働きがあってこそ。2人の連係について、鈴木はこう話す。

「セルジが真ん中に残りたがる部分があるので、自分がなるべく動いている。イメージとしては逆だと思うんですけれど。それでセルジが点を取れているので、まあ、いいかなって」

 常勝軍団鹿島の下部組織で育った男は、チームの勝利のために自己犠牲を払うことを厭わない。だが、虎視眈々とヒーローになるチャンスも狙っている。敵地で行なわれる決勝第2戦は、クラブ初のACL制覇が懸かった大一番だ。血が騒がないはずがない。

「周りを生かしていたら、返ってくると思う。そう信じているから」

 笑顔の裏には、ストライカーとしての意地が感じられた。

取材◎多賀祐輔