2023-24シーズンのWEリーグ第7節が1月7日に行なわれ、三菱重工浦和レッズレディースと大宮アルディージャVENTUSが対戦した。2024年初の埼玉ダービーは、立ち上がりから主導権を握った浦和が大宮Vを圧倒。連覇に向けて、リーグ中断前最後の一戦で勝ち点3を積み上げた。

上写真=ホームの大観衆の声援を受けた浦和が大宮Vとのダービーマッチを制した(写真◎森田将義)

■2024年1月7日 WEリーグ第7節(@浦和駒場スタジアム:観衆3,050人)
浦和 3-1 大宮V
 得点=(浦)安藤梢2、伊藤美紀
    (大)田嶋みのり

最後に1失点も内容で多くの収穫

 2024年初の埼玉ダービーとあって、訪れた観客は3000人以上。浦和の楠瀬直木監督が「こういうゲームはしっかり勝たなければいけない」と意気込む一戦は、試合後にMF猶本光が「めっちゃ楽しかった」と笑みを浮かべたとおり、会心の出来でライバルを寄せつけなかった。

 キーとなったのは、チーム最年長MF安藤梢の起用法だ。昨季は主にCBに入ってWEリーグ優勝に貢献。自身もベストイレブンとMVPに輝いたが、この日は久しぶりの左サイドハーフでプレー。「DFをやっていたので、どうすれば相手が嫌がるかが分かるようになった。前線からの守備は得意にしている」と語ったように、高い位置からの守備で相手に攻撃を組み立てるスキを与えない。「姉さんがあそこまでやると、彼女たちも奮起せざるを得ない」と楠瀬監督が話したとおり、大黒柱のアグレッシブな姿勢はチーム全体への波及効果を生んでいく。

 左サイドでの起用による効果は、もちろん守備だけにとどまらない。「スピードが速くて、いろいろなところに顔を出してくれる。流動的に動いてくれるので、相手は捕まえづらかったと思う」と振り返るのは猶本で、立ち上がりの7分には右サイドでのボール奪取からカウンター。安藤がFW菅澤優衣香に預けてゴール前でリターンをもらい、豪快に右足を振り抜いてゴールネットを揺らした。

 先制点を奪ってからも、高い守備強度を落とさない。猶本は「攻撃も良かったけど、速く前からの守備ができていた」と語り、スタメンに抜てきされたアカデミー出身のMF角田楓佳も攻守に奮闘。「ブロックを作られると崩すのはきつい。奪ったボールの1本目は前へ、と言っている」という楠瀬監督の狙いに沿ってテンポ良く攻撃を前進させ、追加点こそ奪えなかったものの、大宮Vを押し込んだまま前半を終えた。

 後半開始直後の46分にも猶本の浮き球から右サイドを飛び出したMF柴田華絵がシュートを放つなど、浦和の勢いは止まらない。59分には左SB水谷有希のパスが右斜め前方に渡り、MF清家貴子がシュート。相手GKがはじいたこぼれ球を安藤が押し込み、リードを2点に広げた。

「レッズさんの個の能力は分かっていた。粘り強くやろうと言っていたが、スピード、粘り強さにやられてしまった」と柳井里奈監督が語った大宮Vは、劣勢を強いられながらも後半途中からMF仲田歩夢を投入して反撃を開始。左サイドハーフから左SBに回ったMF鮫島彩を交えた左での連係から縦に仕掛けてチャンスをうかがう。

 88分には大宮Vが左CKを獲得したが、ゴール前に入れたボールは浦和GK池田咲紀子がキャッチし、素早く左前方にロングフィードを送ってカウンターを繰り出す。高い位置で受けた清家のクロスは大宮VのDFに渡ったが、素早く奪い返した途中出場のMF伊藤美紀が3点目を決めて試合を決定づけた。

 後半アディショナルタイムの90+2分、クリアボールを大宮VのMF田嶋みのりに拾われ、ミドルシュートで1点を返されて試合終了。それでも楠瀬監督は「今季のWEリーグは少しでもスキを与えられるとやられてしまう。良い薬になった」と話し、チームとしては前向きに捉えている。リーグ中断前最後の一戦は3-1というスコア以上に、内容での収穫が多いものとなった。

取材・写真◎森田将義