第101回の全国高校サッカー選手権大会が、今年も12月28日に開幕する。参加48校の優勝争いとともに注目されるのが、次代を担うタレントのプレーぶりだ。高校サッカーの現場で日々取材を続けている記者2人が、対談形式で今大会のニューヒーロー候補をピックアップ。要注目の選手を前編・中編・後編の全3回に分けて紹介する。まずは前編から。

上写真=今大会終了後ドイツに渡る福田(右)と、川崎Fに加入する名願(写真◎森田将義〈福田〉、牛島寿人〈名願〉)

[記者プロフィール]

川端暁彦(かわばた・あきひこ)/『エル・ゴラッソ』元編集長で、現在はフリーランスの編集者兼ライター。育成年代を中心に日本サッカー界を幅広く取材している。

森田将義(もりた・まさよし)/テレビ局の構成作家などを経て2012年からサッカーライターとして活動中。関西を拠点にジュニアから大学までの育成年代などをカバー。

※サッカーマガジン2023年2月号掲載の記事を再構成

城彰二のような福田、名願は鎌田大地のように?

――選手権は毎回、Jクラブへの加入内定選手が数多く出場しますが、今回は海外のクラブに加入する選手がいます。

川端 FW福田師王(ふくだ・しおう、神村学園=鹿児島)が、ドイツのボルシア・メンヘングラッドバッハに加入します。当面はU-23チームでの活動を視野に入れているそうで、欧州の今季が終わるまでは、U-19チームでの出場も可能とか。欧州の市場が開く1月に『移籍』するので、選手権終了後すぐにドイツへ行くと聞いています。

――早くから注目されていますが、どんな選手ですか。

川端 昨年この企画で紹介したときも話しましたが、初めて見たときは『城彰二のような選手が出てきたな』と感じました。今号の高校選手権特集が懐かしいと思う人は、この説明が一番分かりやすいはず(笑)。ストライカーらしいストライカーで、得点への本能的な部分と、きれいなフォームで飛んでヘッドをたたき込む、みたいな運動能力の高さを兼ね備えています。

森田 福田が中学3年生で国体に出場したとき、初めて見ました。スペースへの抜け出しやゴール前での嗅覚が優れていて、ボックス内で活躍できる。当時も国体では一番下の年代なのに結果を出していましたが、力強さが増して、いろいろなことができるようになっています。

川端 後天的に身につけたと思うのは、動き出しです。ボールのないところで、キレでDFを置き去りにするところをよく見ます。ゴール裏で写真を撮影していると、見失ってしまうんですよ。スタジアムで見ると本当に楽しい選手だと思います。

森田 神村学園は、福田の存在が強みですよね。プリンスリーグ九州ではパスをつなぐだけでなく、ロングパスで福田に預けるような割り切ったプレーもできていました。プレミアリーグ昇格という目標を達成して選手権に臨むのも大きいです。

川端 今年度は調子が良くなくて、本人も満足していません。そのぶん冬に爆発したいという思いが強いので、そこも含めて期待したいですね。

――では、Jクラブ加入内定選手で注目しているのは?

森田 履正社(大阪)のMF名願斗哉(みょうがん・とうや)。川崎Fに加入するので、三笘薫と比較する声もありますよね。ドリブルはテンポが独特で、相手と駆け引きしながら、緩急を使ってキュッと抜いていく感じです。それに、パスのアイディアが豊富なんですよ。そこで、そのタイミングで出すか、という意外なパスを出す。大阪のライバル校の監督には三笘ではなく、鎌田大地のような選手になるのでは、と言う人もいます。

川端 三笘も高校時代はトップ下のファンタジスタでしたからね。体ができてスピードがついてから、ドリブルに特化して、研ぎ澄ませていったけれど。

森田 名願も体ができてドリブルのキレが増し、運動量が多くなりました。以前はボールを持ったときしか光らなかったですが、平野直樹監督にパスを受ける回数や守備について、ずっと言われていましたから。履正社が今年度、プレミアリーグで戦ったことも大きかったです。

川端 本人も「プレミア昇格が大きかった」と言っていましたね。相手のレベルが高く、思うようにプレーできない試合が多いから、もっとやらないと、と思わされたのがよかった。

森田 履正社ではDF西坂斗和(にしざか・とわ)が徳島に加入します。夏以降、すごく良くなりました。西坂が警戒されたら名願がやりやすいし、名願が警戒されたら西坂がやりやすい。相乗効果があってチームの成長を感じます。

――神村学園にもJクラブ加入内定選手がいますね。

川端 キャプテンのMF大迫塁(おおさこ・るい)がC大阪に加入します。キャプテンとしてチームのことを考えなければいけなくなり、プレーが小さくなっていると本人が話していましたが、インターハイ後にC大阪の練習に参加して、いろいろ学んだそうです。選手権では進化した姿が見られるんじゃないかと期待しています。

※中編に続く