上写真=三戸舜介は「ゴールにこだわっている」と意欲的(写真◎スクリーンショット)
「ちょっと力んでしまったのもあって」
強敵サウジアラビアを相手にキックオフから攻め立て、79分に藤尾翔太が退場したものの、それ以降も日本にチャンスはあった。その最大のシーンが終盤にやってくる。三戸舜介が試合を決めにかかった90+2分のことだった。
右サイド深くで半田陸がスローインからクロスを入れると、相手に当たったボールに三戸がいち早く反応した。藤田譲瑠チマに預けてリターンをもらうと、ゴール中央にスペースが空いていた。
「スローインからだったので、どこに選手がいるのかを見ていて、藤田選手に1回預けてもらったらフリーになるかなと思って」
その通り、一瞬でフリーになって前に進んで右足でシュート。そのステップワークとクイックネスはまさに三戸の真骨頂だ。しかし、ボールはわずかに左に切れていった。
「練習からやっていたシュートの形でした」
だが、ほんの少しだけ、練習のようには成功しなかった。
「相手をかわしたあとのボールタッチが少し思うようなところにいかなくて、ちょっと力んでしまったのもあって、あまりうまくいかなかったですね」
寄せてきた相手を軽やかに右にかわし、もう一つ持ち出したボールがずれた。
「もうちょっとボールを外側に置きたかったんですけど、内側に入ってしまって、それで左にずれてしまいましたね」
右足の振りがやや窮屈になったことで詰まるようなキックになって、ボールは意に反して左へと切れていった。
試合は0-0のまま終わり、2試合を終えた日本の勝ち点は4。得失点差でサウジアラビアが首位、日本が2位で最終節のタジキスタン戦に臨むことになった。
三戸は5月の国内キャンプで追加招集で加わり、今回のU-23アジアカップでは見事にメンバー入り。さっそくUAE戦、サウジアラビア戦で途中出場している。初戦は後半の開始から、サウジアラビア戦は61分から。
「2試合とも前半は難しい形で、相手を見ながらでしたけど、途中から入った自分が攻撃の起点になって、流れを作るところを意識して臨みました」
だが、底抜けに明るい表情、というわけにはいかない。
「結果にこだわっているので、満足はしていないですし、もっと特徴を出せると思います」
今季はアルビレックス新潟で松橋力蔵監督に買われて、チームの主力として15試合出場3得点とコンスタントに活躍している。新潟で披露しているような、ゴールに直結するプレーができていないというもどかしさがその身を打つ。
新潟ではアルベルト監督、松橋監督の薫陶を受けてきた。「楽しいですね」と感じている久々の国際大会で、プロになってから2人の指揮官にもらった教えを生かしている。
「攻撃でボールに関わり続けろとよく言われていたので、1試合目はそういう場面を見ることができたのではないかと思います。守備の部分はボールに激しく行くことを言われていたので、そこも意識的にできていると思います」
今回のチームには海外組がいれば、J1の主力としてプレーする選手もいる。三戸は現在はJ2で頭角を現しているが、同じ代表チームの中に格上がいる環境は、刺激的だ。
「自分よりレベルの高い選手ばかりで、負けていられないなという気持ちしかないですね」
その負けん気が、自慢のドリブルのキレを増す原動力になるのだ。