U-21日本代表が臨んでいるドバイカップU-23。3月26日のU-23カタール戦で美しすぎるボレーシュートによるスーパーゴールが生まれた。山本理仁が86分にたたき込んだ一発だが、本人は「たまたま」と浮かれることなく振り返った。

上写真=山本理仁がスーパーゴールを決めて、改めてこの笑顔!(写真◎スクリーンショット)

■2022年3月26日 ドバイカップ U-23(@UAE・ドバイ)
U-23カタール 0-2 U-21日本
得点:(日)斉藤光毅、山本理仁

「体が動いたというか」

 説明する言葉が追いつけないほどのスーパーゴールが生まれた。決めたのは、山本理仁。

 U-23カタールを相手に1-0でリードして迎えた86分だった。鈴木唯人が送った左CKがヘッドで弾き返され、落下地点にいた相手がさらに大きくクリアしようと右足を振り上げたその瞬間、山本がボックスの外から一直線に走ってきた。相手より先にボールに触ろうと、前に飛び込むようにジャンプ一番、空中でバランスが取れるように右足を小さく折りたたみ、右半身を下にするように体を寝かせ、左足をコンパクトに振り抜くと、インステップでまっすぐにインパクトしたボールが吸い寄せられるようにゴール左へと飛び込んでいった。美しすぎるボレー。

 決めた本人は破顔一笑だが、言葉はむしろ淡々。

「カウンターのリスクを見るポジションでもあったので、とりあえずシュートで終わろうと思っていました。たまたまきれいにミートして入ってくれた感じです」

 もちろん、計算づくでは生まれないゴールかもしれないが、それにしても「たまたま」と振り返るのも驚きだ。

「感覚的なものですね。身体的なプレーをするタイプではないですけど、体が動いたというか、ボレーにチャレンジしてああいう形になったと思います」

 考えるより体が先に動いたから、相手が振り上げた足がぶつかる恐怖もなかっただろう。動き出しからフィニッシュまで、まったく迷いも無駄もないスーパーゴールだった。

 これがこの遠征で初出場だが、ピッチに入ったのは64分から。他の選手に比べれば、出場時間は短い。このド派手なゴールが大きなインパクトにはなったが、それに反省点までかき消されるのは山本の本意ではない。

「試合に出たらアシストやゴールでアピールしたいと思っていたので、それができたのは素直にうれしいです。でも、ゲームコントロールの部分で2−0で勝っているときの試合運びやボール保持の仕方には反省点があります。そこは次につなげたい」

 中盤の底に立って、チーム全体のテンポを早めたり遅くしたり、リズムを強めたり弱めたりとコントロールすることが最大の強み。だが、それを発揮しきれなかったことを悔やむ。

「ボールを持っていれば相手に攻撃されないし、ゲームを支配して終わりたい気持ちがありました。でも、結果的に少し蹴るようになってしまったと感じたので、自分がもう少しリーダーシップを取ってやっていければというのが反省です」

 練習時間も少ない即席チームだから細部を詰めるのはこれからだが、山本理仁というリーダーシップがチームを引き締めるであろうことは、本人が一番わかっている。

 最後は、東京ヴェルディで中学時代からともに競い合ってきた藤田譲瑠チマとボランチでコンビを組んで試合を締めた。「馬場(晴也)もいて、3人で日の丸を付けて戦えるのは非常にうれしいです」と、ともに高め合ってきた仲間の存在を思う。

 圧倒的なインパクトを残しつつも、「仲間の良さを見ながら自分のいいプレーも出していければ」と縁の下の力持ちであることが自分を輝かせると知っている。貴重な左利きのボランチとして、さらなる異彩を放っていく。