サンフレッチェ広島MF川辺駿が、スイスのグラスホッパーへの完全移籍でクラブ間が基本合意に達したと発表された。今年に入ってからの日本代表での台頭と、直後の欧州行きは、17歳のときに予言していた未来を現実にしたものでもある。

「いずれは海外のクラブで」

 2013年、高校3年時にユース所属のままプロ契約を結び、Jリーグデビューも果たしたが、トップチームに昇格した14年は、ほとんど出場機会をつかめなかった。15年からのジュビロ磐田への期限付き移籍は3シーズンに及び、そのまま完全移籍するのかと思った時期もあったが、18年に復帰。いまや広島の大黒柱として不動の存在となった。

 今年3月には初めて日本代表に招集され、6月シリーズでは代表初ゴールや、ドリブル突破からの鮮烈なアシスト、途中出場で流れを変えるなどの働きで注目された。日本代表の新しい戦力になると期待させるパフォーマンスを見せ、活躍の場を海外へと移す。

広島のトップチームの練習にも参加していた2012年。9年後、当時の森保一監督(後方)は日本代表の監督として、川辺を初めて日本代表に選出することになる(写真◎石倉利英)

 ふと、思い出した。前述の17歳のときのインタビューで、年代別代表の活動で海外に遠征したときの経験から、こんなことを語っていた。

「将来はサンフレッチェでプロになり、いずれは海外のクラブでプレーしたいです。日本代表になったら、海外の選手と戦うことになります。それなら海外のクラブで経験を積んだ方が、日本代表でも活躍できる。海外の選手に慣れていれば、世界の舞台でも物おじせず、自分のプレーが出せると思います」

 サンフレッチェでプロになり、日本代表になって、海外のクラブへ。17歳のときに予言していた未来が、現実となった。

 もちろん、ここがゴールではない。まだ25歳、キャリアの最盛期はこれから。17歳のときに語っていたように、海外クラブでの経験を、日本代表での活躍につなげてほしい。そして、カタール・ワールドカップ最終予選や本大会で『試合を決めるプレー』を見せ、日本に大きな勝利をもたらす日を楽しみに待ちたい。

文・写真◎石倉利英