サンフレッチェ広島MF川辺駿が、スイスのグラスホッパーへの完全移籍でクラブ間が基本合意に達したと発表された。今年に入ってからの日本代表での台頭と、直後の欧州行きは、17歳のときに予言していた未来を現実にしたものでもある。

上写真=2012年、プレミアリーグWESTでゴールを決めて笑顔を見せる川辺。早くから将来を期待されていた(写真◎石倉利英)

「試合を決めるプレーができる」

 川辺駿が欧州へと旅立つ。完全移籍へのクラブ間合意が発表されたグラスホッパー・クラブ・チューリッヒはスイスの名門で、1部リーグ復帰を機に戦力補強を進める中で、川辺に白羽の矢を立てたという。

 初めて取材したのは2012年、まだ17歳だった高校2年生のとき。当時、高校年代最強の実力を誇ったサンフレッチェ広島ユースで、1年時からレギュラーで活躍していた俊英を取り上げるため、本人や周辺に話を聞いた。

 広島ユースを率いていた森山佳郎監督(現U-17日本代表監督)は「落ち着きがあって、周りがよく見えている。パスだけでなく、ドリブル突破もできるのが大きい」という持ち味のほかに「試合を決めるプレーができることが特徴」と評価していた。3-4-2-1のボランチやシャドーでプレーしながら、この年のプレミアリーグWESTで貴重な得点を量産。「今日は負けたかな、引き分けかな、という試合に限ってゴールを決める。大事なときに、大事なゴールにつながるプレーができるのは、それだけでも才能だと思う」と指揮官が語るプレーで、特別な輝きを放っていた。

2012年、高校2年時の川辺。広島ユースでは1年時からレギュラーとして活躍していた(写真◎石倉利英)

 本人は広島ジュニアユース時代、あまり前に出ていくことはせず、「求められてもいなかった」。どちらかというと、パスをさばくタイプのボランチだったそうだ。だがユース昇格後、パスをさばく選手が別にいたことから「自分はどんどん前に絡んでいくようになった」という。「点を取ることが求められているので、練習からエリア内での仕掛けを意識している」と語っており、守備で力を発揮しつつ、3列目から飛び出して得点に絡む現在のスタイルは、この時期のプレーがベースとなっている。