あのゴールが、たくさんの人の心に温かい火を灯した。2011年3月29日のチャリティーマッチでカズが決めたゴールは、ゴール以上の意味を持っていまでも語り継がれる。あれから10年。改めて、カズからのメッセージ。

上写真=10年前、「ゴール以上のゴール」を決めて、祈りのカズダンスを披露した(写真◎毛受亮介)

■2011年3月29日 東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン! 心をひとつに。(@大阪・長居/観衆:40,613人)
日本代表 2-1 Jリーグ TEAM AS ONE
得点:(日)遠藤保仁、岡崎慎司
(J)カズ

・日本代表メンバー:GK1川島永嗣(31分、21西川周作/61分、23東口順昭)、DF22吉田麻也(46分、25栗原勇蔵)、15今野泰幸(61分、3岩政大樹)、2伊野波雅彦(78分、12森脇良太)、MF6内田篤人(46分、8松井大輔)、17長谷部誠(46分、20阿部勇樹)、7遠藤保仁(46分、16柏木陽介)、5長友佑都(46分、4槙野智章)、FW18本田圭佑(46分、14藤本淳吾)、11前田遼一(46分、19李忠成)、9岡崎慎司(46分、26乾貴士/72分、10家長昭博)
SUB13細貝萌、24本田拓也、監督=アルベルト・ザッケローニ

・Jリーグ TEAM AS ONE メンバー:GK1楢崎正剛(46分、12川口能活)、DF5駒野友一(62分、8小宮山尊信)、22中澤佑二(46分、3茂庭照幸)、4田中マルクス闘莉王、7新井場徹、MF40小笠原満男(46分、25中村俊輔)、14中村憲剛(62分、11カズ)、18小野伸二(62分、6関口訓充)、FW10梁勇基(62分、15平井将生)、9佐藤寿人(62分、16ハーフナー・マイク)、13大久保嘉人(46分、24原口元気)
監督=ドラガン・ストイコビッチ

「痛みや苦しみをずっと持ったまま生きてはいけません」

 GK川口能活のキックを、前線に上がっていた田中マルクス闘莉王がヘッドでさらに前に流すと、走り込んだカズにピタリ。GK東口順昭が飛び出してきたその出際を突いて、右足でワンタッチで流し込んだ。

 そして、歓喜と鎮魂のカズダンス。

 2011年3月29日、「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン! 心をひとつに。」で、日本代表とJリーグ TEAM AS ONE が対戦。日本代表が2-0でリードしていた82分、Jリーグ TEAM AS ONEのカズが鮮やかなゴールを決めた。

――いま、本当に苦しんでいる人たちには諦めてほしくない。僕自身、どこに行っても「44歳だ」と言われますが、自分もサッカーで諦めていないし、諦めたこともない。挑戦し続けたいと思っています――

 試合後にそんなメッセージを伝えたカズは、54歳のいまでもまだ諦めていない。

 あれから10年、だ。

「震災チャリティーマッチで僕が決めたゴールを被災地の方々が喜んでくれて、自分にとってもものすごく大きな1点で、ゴールというものががあんなに力があるのかと自分自身も思い知らされたゴールだったといまでも思います。みんなのためにプレーすることが価値あることなのだと身を持って体験できて、常にプレーできる喜びも感じながら、その価値をこの10年でさらに教わった感じがします」

 10年という節目に感じることはたくさんあるが、「忘れていくこと」に対してただ警鐘を鳴らすだけではないのが、いまでもピッチで戦い続けるカズの思いだ。

「あれだけ大きな震災があって、忘れてはいけないですけれど、痛みや苦しみをずっと持ったまま生きてはいけません。時間が過ぎると忘れるのは、人間としてはしょうがないことだと僕は思っています。でも、3月11日が来るたびに思い出して活動や触れ合う機会を持っていきたいと思っています。これからもどこで何が起こるか分からないですから、経験を生かして痛みを思い出して、みんなで助け合っていくのが大事なことです」

 だからこれからも、これまでと同じように、向き合っていく。

「10年前からずっと、選手会でも各クラブでもそうですが、被災地に行ったりしながら関係は続いています。コロナ禍で去年から直接行ってみんなと触れ合って子どもたちとサッカーをしたりすることはできなくなってしまいましたけど、落ち着いてからまた現地で皆さんと触れ合うことができるのであれば、そういう活動をしていきたいと思いますし、選手会でチャリティーなど続けてきていることもあるので関わっていきたいですね。僕の場合はサッカーを通してなので、現地に行ってサッカーをしたい」

 次の10年へ、カズの思いは続いていく。