準決勝を辛くもPK戦で勝ち抜き、11年ぶりの決勝に駒を進めた山梨学院。MF石川隼大にとっては、開始21秒で先制しながら、逆に2-1から同点に追いつかれるPKを献上する慌ただしい試合に。決勝では初対戦となる青森山田を止める意欲にあふれている。

上写真=準決勝の帝京長岡戦では石川隼大が電光石火の先制弾を決めた(写真◎小山真司)

■2021年1月9日 全国高校サッカー選手権準決勝(@埼玉スタジアム)
山梨学院 2-2(PK3-1)帝京長岡
得点者=(山)石川隼大、一瀬大寿
    (帝)川上航立2

「声で立ち直ることができた」

 石川隼大にとっては、青森山田との対戦は初めてになるのだという。それが高校選手権の決勝で実現するというめぐり合わせ。

「青森山田とはまだやったことがないんですけど、試合は見ています。すごく縦に速いし、空中戦も強いので、そこは山梨学院の守備力で上回りたいと思います」

 強いのは分かっている。だが、ここまで来て負けるつもりはない。

 1月9日の準決勝では帝京長岡(新潟)を相手に電光石火の先制弾を決めた。野田武瑠の意表を突くロングシュートが右ポストに当たってはね返ったところを、久保壮輝が狙ったがGKに弾かれた。そのこぼれ球を石川が流し込んだのが、開始わずか21秒のことだった。

 後半開始間もない50分には、右からの新井爽太のロングスローを一瀬大寿がヘッドで叩き込んで2-0。優位に試合を進めた。しかし59分に川上航立に1点返されると劣勢に立たされ、勢いに気圧されるように石川がPKを与えてしまった。これを決められて78分に2-2に追いつかれた。

「ゴールを決めましたけど、終盤でPKを献上してしまって、すごい悔しさの残る試合でした」

 だが、この試合から無観客での開催になったことが、結果的に石川にはポジティブな影響ももたらしたという。

「声が通るので、監督も試合前に言っていたのですが、ミスを声でカバーしようと。PKを与えたんですけど、声で立ち直ることができてそのままプレーできたことがカギだったと思います」

 仲間たちから石川を鼓舞する声がどんどん届いたから、すぐに切り替えることができた。

「帝京長岡は奪ったあとに守備の切り替えがすごい早いので、シンプルに相手の裏をロングボールで突く狙いがありました」と先制ゴールが狙い通りだったことを喜び、一方でボランチとしては守備面で「相手の14番(川上航立)が縦パスを刺すイメージだったので、そこを消す役割をしていたが通されてしまいました。課題として残ったので、修正して決勝に臨みたいです」と悔やんだ。

 その反省を生かして、強烈な攻撃力を備える最強軍団、青森山田にどう対抗していくのか。ボランチ石川のプレーが流れを左右しそうだ。