日本代表は5日、オランダ・ユトレヒトで合宿をスタートさせた。初日の練習前にはキャプテンの吉田麻也がオンラインで取材に応じ、コロナ禍における活動の意義と1年ぶりの代表活動への意欲を語った。

上写真=練習中の吉田キャプテン。右は中山雄太(写真◎JFA)

チーム内に雰囲気を作りたい

 今回のオランダ遠征はこれまでとはまた異なる、大きな責任があるとキャプテン、吉田麻也は話した。来年3月に延期となったワールドカップ予選に向けた準備という点に加えて、コロナ禍に行なわれる代表活動という点でも大きな注目を集めているからだ。

「誰もが僕も含めて待ちに待った代表戦だと思いますし、選手もスタッフの協会も、そしてやっぱりファンの皆さんが待ち望んでいた試合だと思います。僕自身は選出されてすごくうれしいですし、日本代表としてもう一度活動ができるという意味で、心の底からうれしいと思います。
 ただこういう状況ですし、日本のスポーツの中で、団体競技としてサッカー日本代表が初めてこういう活動するということで、いろんな意味で注目される期間になる。ですから僕らが良い形で成功を収めて、少しずつスポーツが本来の姿を取り戻せるようにしていけたらと思っています。そういう意味では今回の僕たちの責任は非常に大きい。ピッチ内外で自分たちがやらなければならないことに集中したい」

 今回の遠征実現にあたり、日本のスタッフ、そして試合開催地のオランダの関係者、さらに各選手の所属クラブなど多くの人たちの尽力があった。そして今回の活動は他競技の日本代表にとって参考例にもなる。是が非でも成功を収め、次につなげたいとの思いがその言葉からは感じられた。

 成功のためには、もちろんカメルーン戦とコートジボワール戦で代表としての戦いを示す必要がある。吉田は1年ぶりの活動でしっかりと代表チームになるために「雰囲気」を作りたいと話した。

「若くて代表経験のあまりない選手が来ていますし、僕が何かを伝えるというよりかは入ってきた選手が各々に感じてほしい。僕たち経験のある選手がやらなければいけない事は伝えることよりもそれを感じ取れる雰囲気をチームの中に作り出すことだと思う。そういう意味では今回、岡崎慎司選手、長友佑都選手が来れなくなってしまったので、僕に求められるものはより大きくなってくると思います。自分がやらなければいけないことは理解しているつもりなので、初日の今日からそういう雰囲気を作りたい。若い選手にどんどん吸収してもらって。必要ならばいろんなことをディスカッションできるような雰囲気も作って、いろいろな情報交換だったり、いろんな選手と話ができたらいいなと思います」

「今の選手たちを見て自分が20代前半だった頃を思い起こすし、今みんながどういうことを経験してるのかも理解できます。いま、僕も3カ国目でプレーし、同じようにいろんなことを吸収している。そういうときって伸びるなと、やっぱり思うので、若い選手たちにもそういうことを経験して伝えていってほしいと思います。今回の代表もそういう場にしたい」

 森保一監督も折に触れて、代表に参加することで若い選手が経験豊富な選手から学ぶことを期待すると話していた。実際、代表で刺激を受けてレベルアップを目指し、環境を変え、海を渡った選手がいる。サッカーに対する取り組み方を改めた選手もいる。そうした刺激を受ける場が1年間なかったことは強化面を考えても大きなマイナスだろう。今回、すでに海外でプレーする東京五輪世代の選手が7人参加しているが、さらなる刺激を受ける場になることも期待される。もちろん、経験ある選手たちが若手から刺激を受けることにもなるはずだ。

 今回の2試合の位置づけについて、吉田はこう捉えている。

「チームとしては、予選を戦っていく上で、もっともっと上げなければならないとですし、もっと国際経験をつまなければいけない。そうしなければ厳しい試合をこなしていて勝ちをもぎ取れるチームにならないと思う。そういう意味ではこの2試合の相手というのは本当に強豪だと思いますし、メンバーを見ても非常にタフな試合になると思う。活動が限られている中で今こういったチャンスをもらえたのは非常に僕にとってはプラスだと思います」

 アフリカの強豪との2試合を貴重な機会にしたいと話した。吉田が考える「みんながハードワークして、他のチームよりも走って、前に早くたくさんの選手が絡みながらゴールに向かっていく。1人の選手に依存するのではなくて11人と、ベンチも含めて全員で行なうトータルフットボール」という森保サッカーの精度を上げることに力を注ぎ、現状把握と進むべき道を再確認することになるだろう。

「前回からかなり時間が空いてますし、短い時間なので非常に難しいとは思うんですけど、その中でも1日1回のトレーニングを濃いものにしていかなければいけないですし、何度も言ってますけどピッチ内外でこの合宿を濃いものにしていかなければいけないと思っています。今回の活動は個人的にもチームとしても大切な時間になると思うので、1秒1秒を惜しみなくチームの底上げにつながるように費やしていきたい」

 日本代表は9日にカメルーン戦、13日にコートジボワール戦に臨む。『濃い』ゲームが期待される。