この連載では、全国高校サッカー選手権に出場し、その後Jリーガーとなった選手を当時のお宝写真とともに紹介していく。連載第10回は、第90回~92回大会編。名門校の復活、そして歴史に残る劇的な初優勝があった。

上写真=左から浅野拓磨、鈴木武蔵、室屋成(写真◎サッカーマガジン)

改修前の“最後の国立”

 前年度のベスト4がそろって予選敗退し、本命不在と言われた第90回大会(11年度)だが、栄光を争ったのは優勝経験のある名門同士だった。ファイナリストは9年ぶり5度目の優勝を目指す市立船橋(千葉)と、20年ぶり2度目の優勝を狙った四日市中央工業(三重)。延長戦にまでもつれこんだ熱戦は、試合終了直前に市立船橋のエース和泉竜司(現・鹿島アントラーズ)が劇的な逆転ゴールを決め、市立船橋が見事に優勝を果たした。

 市立船橋の優勝により連続初優勝は6年で途絶えたが、続く第91回大会(12年度)で再び新チャンピオンが誕生する。どちらが勝っても初優勝となった鵬翔(宮崎)と京都橘(京都)による決勝戦は、2度追いついた鵬翔がPK戦の末に初優勝。宮崎県勢初の日本一に輝いた。なお、この大会の決勝は2013年1月14日に行なわれる予定だったが、大雪のために史上初めて延期され、5日後の1月19日に行なわれた。

「国立最終章」と銘打たれ、改修前の国立競技場での最後の大会となった第92回大会(13年度)は、富山一(富山)、星稜(石川)、四日市中央工業(三重)、京都橘(京都)の4校が準決勝に進み、そのうち決勝進出経験のなかった富山一と星稜が最後の舞台を踏んだ。北陸勢同士のライバル対決は、残り3分まで2点のビハインドを追っていた富山一がロスタイムに追いつき、延長後半に逆転するという、国立競技場38回の決勝のなかでも歴史に残る劇的な幕切れとなった。

◆白崎凌兵

白崎凌兵(山梨学院高校)

鹿島アントラーズ(2019-)/写真◎J.LEAGUE

白崎凌兵(しらさき・りょうへい)◎1993年5月18日生まれ。第88、89、90回(09、10、11年度)選手権に出場。卒業後の清水エスパルス入りが内定し、大会随一のスターとして注目を浴びた。だが相手のマークに苦しみ、力を発揮できずに初戦敗退。「サッカーの難しさを教えられた」と唇をかんだ。清水では10番を背負い、2019年より鹿島アントラーズでプレーする

◆鈴木武蔵

鈴木武蔵(桐生一高校)

北海道コンサドーレ札幌(2019-)/写真◎J.LEAGUE

鈴木武蔵(すずき・むさし)◎1994年2月11日生まれ。第90回(11年度)選手権に出場。ジャマイカ人の血を引く韋駄天アタッカーは、母校を初の選手権に導いた。本大会でも初戦でハットトリックを挙げるなど、ベスト8進出の立役者に。卒業後はアルビレックス新潟に加入し、水戸ホーリーホック、松本山雅FC、V・ファーレン長崎を経て、昨季より北海道コンサドーレ札幌に加わった

◆浅野拓磨

浅野拓磨(四日市中央工業高校)

サンフレッチェ広島時代(2013-16)/写真◎J.LEAGUE

浅野拓磨(あさの・たくま)◎1994年11月10日生まれ。第89、90、91回(10、11、12年度)選手権に出場。2年時には同級生の田村翔太(現・ロアッソ熊本)との2トップでゴールを量産。決勝まで全試合得点を記録し、得点王に輝いた。2016年にサンフレッチェ広島からアーセナル(イングランド)に移籍し、今季はパルチザン(セルビア)でプレーする

◆植田直通

植田直通(大津高校)

鹿島アントラーズ時代(2013-18)/写真◎J.LEAGUE

植田直通(うえだ・なおみち)◎1994年10月24日生まれ。第89、91回(10、12年度)選手権に出場。テコンドーで培った身体能力の高さを買われ、1年時から名門校のCBに抜擢される。2011年のU-17W杯で主軸を担うなど国際大会で活躍したが、3年時の選手権は初戦敗退に終わった。鹿島アントラーズでA代表にまで上りつめ、2018年にサークル・ブルージュ(ベルギー)へ完全移籍