あの頃があるから今がある――。この連載では大学時代に大きく成長し、プロ入りを果たした選手たちを取り上げる。第8回は、流通経済大からJリーグに進み、今季でプロ9年目を迎える山村和也だ。

移籍で新境地を開拓

 年代別代表ではボランチで起用されたが、大学ではクレバーなセンターバックとして名を馳せた。カバーリング能力に長け、冷静にラインをコントロールしていた。

「大学に入ってから精神面が成長し、落ち着いてプレーできるようになりました。高校時代よりも、周りがよく見えています」

 持ち味の一つであるビルドアップは、流経大で磨き上げたものだ。中野雄二監督に積極的なチャレンジを促され、ミスを恐れずに縦パスが出せるようになったという。恩師である指揮官は、その攻撃センスを高く評価した。

「山村はただボールを奪うのではなく、その後のイメージを持っています。最も遠いフォワードの位置まで見えています。守るための守備ではなく、攻めるための守備ができる選手です」

 スマートなセンターバックというイメージはあるものの、根性は人一倍ある。国見高校時代に体力、メンタルともに徹底的に鍛えられてきた。

「伝統の狸山(ランニングコース)を走ってきましたから。90分間、走り抜く運動量には自信を持っています」

 歯を食いしばって25キロの距離を駆け抜けた後、全体練習をこなすこともあった。それでも、弱音を吐くことはなかった。「もう二度とできない」と笑っていたが、山村の血となり、肉となったのは言うまでもない。高校時代に基盤をしっかり築き、そして大学でその能力が存分に引き出された。

 プロ入り後は従来のCBとボランチだけではなく、マルチの才能を発揮。C大阪ではトップ下、1トップとしてプレーし、ルヴァンカップ優勝に貢献した。19年には川崎Fに完全移籍し、さらなる飛躍を誓っている。目標は自身初となるリーグ優勝だ。

「いつも他クラブの選手たちが歓喜する姿を見てきた。僕もあの場所で喜びたいです」

 今年で31歳を迎えるが、その潜在能力はまだ底知れない。いまも大学時代と変わらず、「純粋にサッカーがうまくなりたい」と向上心にあふれている。新型コロナウイルスの影響でハードスケジュールとなる今季は、無尽蔵のスタミナを誇るオールラウンダーの活躍が欠かせない。

2012年に鹿島アントラーズに加入。プロ1年目から背番号4を与えられた(写真◎J.LEAGUE)

2016年から3年間プレーしたセレッソ大阪では前線でも起用され、17年には自己最多の8得点を記録(写真◎Getty Images)

昨季はシーズン終盤にCBのレギュラーをつかみ、ルヴァン杯初優勝に貢献した(写真◎Getty Images)

やまむら・かずや◎1989年12月2日生まれ、長崎県出身。国見高校を卒業後、流通経済大に入学。大学在学中から五輪世代の年代別代表にコンスタントに招集されて活躍した。12年に鹿島アントラーズに加入し、同年にはロンドン五輪に出場。16年にセレッソ大阪に移籍し、18年までプレーした。19年に川崎フロンターレに完全移籍し、現在に至る。186cm、80kg

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