あの頃があるから今がある――。この連載では大学時代に大きく成長し、プロ入りを果たした選手たちを取り上げる。第5回は、早稲田大4年時にインカレ(全日本大学サッカー選手権大会)を制し、現在は大宮アルディージャでプレーするFW富山貴光だ。

盟友との再会

 どん欲にゴールを狙い続ける姿勢は、ロンドン五輪日本代表を率いた関塚隆監督(現・JFAナショナルチームダイレクター)にも認められた。2010年のアジア大会には大学3年生で唯一メンバーに選ばれ、キルギス戦では1ゴールを記録。五輪の最終予選こそ招集されなかったが、その才能はプロと同等の評価を受けていた。大学では古賀聡監督(現・名古屋グランパスU-18監督)に心身ともに鍛えられて、大きく成長した。

「他大学に比べても練習量は多いし、密度だって濃いと思います。プロのような調整練習はないので、いつも厳しいトレーニングを積んできました」

 早稲田大の頃から献身的なフォアチェックは、鬼気迫るものがあった。当時、ドイツで活躍していた岡崎慎司(現・ウエスカ/スペイン)に惹かれ、「プロになってもガツガツしたプレーで勝負していきたい」と話していた。根底にはブレないサッカー観がある。

「ボールを奪わないと攻撃はできない。幼い頃からずっとフォワードでしたが、守備をしないとサッカーをしている気がしないんです」

今季開幕戦で決勝点を決めてガッツポーズ。14番の近藤が駆け寄る(写真◎J.LEAGUE)

 プロ8年目を迎える富山のプレーを見ていれば、根本は昔も今も変わらない。大学卒業後、大宮アルディージャに加入し、サガン鳥栖、アルビレックス新潟を経て、18年に大宮に復帰。今季は開幕戦で途中出場し、決勝点をマークした。ゴール後にいち早く駆け寄ってきたのは、今季大宮に加入した大学時代の後輩、近藤貴司。7年前にともにインカレを制覇したメンバーである。

 そして現在、大宮には同期の畑尾もいる。肺の病気で苦しんだ元主将は1年遅れでプロとなり、ヴァンフォーレ甲府、名古屋グランパスを経て、18年途中から大宮入り。運命はエンジ色の糸でつながっているのかもしれない。巡り巡って、日本一に輝いた早大トリオが集結。新型コロナウイルスの影響でリーグ再開の見通しは立っていないものの、3人同時にピッチに立つ日が待ち遠しい。

プロ1年目の2013年。J1・第3節の新潟戦で初ゴールを決めた(写真◎J.LEAGUE)

2016年から17年途中まで鳥栖でプレーした(写真◎J.LEAGUE)

期限付き移籍加入した新潟ではリーグ戦5試合に出場。17年シーズン終了後に大宮への復帰が決まった(写真◎J.LEAGUE)

とみやま・たかみつ◎1990年12月26日生まれ、栃木県出身。矢板中央高で全国高校選手権に出場し、高校時代はベガルタ仙台の特別指定選手として登録されていた。高校卒業後、早稲田大へ進学し、インカレ優勝などに貢献。2013年に大宮に加入し、15年まで在籍した。16年に鳥栖へ完全移籍するが、17年8月に新潟へ期限付き移籍。18年から大宮に復帰し、現在に至る。180cm、73kg

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