日本サッカー界で輝いた新旧のミッドフィルダーたちへのオマージュを届ける連載の第2回は、フランス・ワールドカップに挑んだ山口素弘、名波浩、中田英寿のユニットがテーマ。NAKATAという鬼才を組み込んだ中盤の妙をもう一度。

「分からないこと」は楽しい

日本代表で名波とともに中盤を形成し、チームのバランスを取っていた山口素弘(写真◎サッカーマガジン)

「2・5」とは、「2」ではないし「3」でもなくて、でも「2」であって「3」でもある。こうして「2でなくてはならない」とか「3でなくてはならない」というような規範から解き放たれる自由を手にしながら、でもその実、どちらに対しても責任を抱え持つ、というような概念として、私は感じ取った。常識の裏をかく楽しみを享受しながらもやるべきことを決して放棄しないという振る舞いというか生き様が、いかにも名波らしかった。

 そう考えると、名波がのちに冗談めかして言った「ヒデは確かにすごかったけどさ、言っとくけど、操ってたのはオレだからね!」という言葉も腑に落ちてくる。

 さりげなくボールを預ける姿はエレガントだが繊細すぎず、ボールを相手から剥ぎ取る技量は激しいが獰猛すぎない。それが山口の良さ。ムチのような曲線的なしなやかさと刀のような直線的な切れ味を共存させた。それが中田の天賦の才。その両方が、彼らの間である「2・5列目」に(まさに「次兄」として)入った名波の存在によって結び付けられ、存分に力を発揮したのだと考えることができる。

 だから名波は、中田だけではなく、山口をも「操って」いたのかもしれない。

 それと同じように、中田が名波と山口を、山口が名波と中田をコントロールしていたのかもしれない。

 でももちろん、こうした解釈が正しいかどうかは分からないし、こんなことを言う私に向かって、名波が「まだまだ分かってねえなあ」と笑いながら肩をぽんと叩いて軽やかに去っていくような妄想もわいてきて、ああ、「分からないこと」もまたサッカーの楽しさだよなと「再発見」したのだった。