歴史を学ぶ『日本サッカー温故知新』の第2回。この連載では日本サッカーが大きく発展した『平成の30年間』を写真と記録で振り返る。平成2年度(1990年度)の日本サッカー界には今も現役の革新者が帰還した。

上写真=ブラジルのサントスなどでプレーしたカズが日本代表としてW杯出場を目指すために帰国を選択し、読売クラブに入団(写真◎早浪章弘)

天皇杯では新王者が誕生

 Jリーグの前身、日本サッカーリーグ(JSL)に新鮮な風が吹き込んだ。「王国」ブラジルでプロとなり、名門サントスなどでプレーした三浦知良(カズ)が凱旋したのだ。ドラマのような現実を生きるヒーローを得て、読売クラブは90年度(90-91シーズン)のJSL1部で4年ぶりの優勝を果たした。

 その得点力は圧倒的で、2位の日産自動車が27得点(22試合)なのに対し、読売クラブは41得点を叩き出している。リーグ得点王には読売クラブの戸塚哲也(ほかに北澤豪、レナト)、アシスト王にもチームメイトのラモス瑠偉が輝いた。ちなみにベスト11(年間優秀11人賞)にも、読売クラブからカズ、武田修宏、ラモス瑠偉、三浦泰年、堀池巧、加藤久の6人が選出されている。

 90年度の天皇杯では、新王者が誕生した。決勝で松下電器(現ガンバ大阪)が前年度王者の日産自動車(現横浜F.マリノス)に競り勝った。平成では唯一、PK戦までもつれた激闘を制して、その名を刻んでいる(0-0/4PK3)。FWには永島昭浩、DFには美濃部直彦、今年2月に25年ぶりに強化スタッフとしてクラブに復帰した和田昌裕らがいた。

 日本代表は、この年に初開催されたダイナスティカップで3戦全敗。アジア大会でも8強に留まった。一方の女子代表は6チームのリーグで行なわれたアジア大会で、開催国の中国に敗れたものの、このシーズンの日本女子リーグで全勝優勝を果たしたベレーザの野田朱美らが奮闘。3勝1分1敗という成績を収めて、銀メダルを獲得した。

◆平成2年度の主なタイトル一覧
JSL:読売クラブ(第26回・90-91年)
天皇杯:松下電器(第70回・90年度)
JSL杯:日産自動車
JSL・MVP:ラモス瑠偉(読売)
得点王:レナト、北澤豪、戸塚哲也
JSL新人王:井原正巳(日産)
優秀監督賞:カルロス・アルベルト・ダ・シルバ(読売)
高校選手権:国見高(第69回・90年度)
高円宮杯U-18:清水商高
大学選手権:東海大
日本女子リーグ:読売SC女子ベレーザ

平成2年度の主な出来事(1990シーズン)

・3月25日 全日本女子選手権は高槻FCが優勝(第11回・89年度)
・4月8日 第25回JSL・1部は日産が優勝(89-90)
・4月21日 第2回日本女子リーグが開幕
・7月27日 バルセロナ(スペイン)が初来日し、JALカップで日本リーグ選抜と対戦。4-2でバルセロナが勝利する
・7月30日 カズがブラジルから帰国し、読売クラブ入団会見を行なう
・7月27日 北京で開催された第1回ダイナスティカップに出場。日本は韓国に0-2で敗戦
・7月29日 ダイナスティカップ第2戦、日本は中国に0-1で敗戦
・7月31日 ダイナスティカップ第3戦、日本は北朝鮮に0-1で敗れ、3戦全敗
・8月7日 インターハイは清水商高が2連覇を達成
・8月25日 JFLカップ2回戦、住友金属戦で読売クラブのカズが公式戦デビュー
・8月― プロリーグ検討委員会を開催(以降、91年まで6回開催)
・9月2日 第15回JSLカップは日産が2年連続優勝
・9月9日 第1回高円宮杯(U-18)は決勝で清水商高と習志野高が対戦。清水商高が初代王者に輝く
・9月26日 北京でアジア大会が開幕。D組の日本男子代表は3-0でバングラデシュに勝利
・9月27日 アジア大会、日本女子代表は0-5で中国に敗戦
・9月28日 アジア大会、D組の日本男子代表は0-2でサウジアラビアに敗戦も2位でGSを突破し8強入り
・9月29日 アジア大会、日本女子代表は8-1で韓国に勝利
・10月1日 アジア大会、日本男子代表は準々決勝に臨み、イランに0-1で敗戦
・10月1日 アジア大会、日本女子代表は5-0で香港に勝利
・10月3日 アジア大会、日本女子代表は3-1で台湾に勝利
・10月6日 アジア大会、日本女子代表は1-1で北朝鮮と引き分け、銀メダルを獲得
・10月28日 第26回JSL・1部が開幕
・10月― JFA内にワールドカップ招致準備事務局を設置
・11月10日 アジアユース選手権で日本はグループステージで敗退し、ワールドユース出場ならず
・12月25日 大学選手権は東海大が2年ぶり2度目の優勝
・91年1月1日 天皇杯は松下電器が初優勝。関西勢として16年ぶりの優勝を果たす(第70回・90年度)
・91年1月8日 高校選手権決勝は、国見高と鹿児島実高による初の九州対決。国見高が3年ぶり2度目の優勝(第69回・90年度)
・91年1月20日 第2回日本女子リーグでベレーザが無敗で初優勝(90年度)

アジア大会で銀メダルの女子代表。後列左から本田、坂田、松田、野田、水間、加治。中列左から松永、弘中、半田、木岡、鈴木、山口。前列左から高萩、渡辺、黒田、手塚、長峯、高倉(写真◎BBM/サッカーマガジン)