2連敗ですでに敗退が決まっている日本が最終戦のカタール戦に臨んだ。退場者を出す苦しい展開の中、先制するもそのまま試合を終えられずに追いつかれてドロー。日本は3戦未勝利、グループBの最下位で大会を終えた。

上写真=サポーターに挨拶する日本の選手たち

■2020年1月15日 AFC U-23選手権 グループステージ第3節
 カタール 1-1 日本
 得点:(カ)アルアフラク (日)小川航基

カタール戦の出場メンバー:GK大迫敬介、DF橋岡大樹、立田悠悟、町田浩樹、杉岡大暉、MF相馬勇紀(89分、松本泰志)、田中駿汰、田中碧、食野亮太郎(83分、田川亨介)、FW旗手怜央(46分、齊藤未月)、小川航基

6試合を求めて3試合に終わる

 森保一監督は、高温多湿の気候やタイトな日程が五輪本大会に似ていることから、今大会は決勝に進んで6試合を戦うことを目標に掲げていた。それはつまり本大会でも決勝に進むことを想定しており、ここで貴重な経験を積んでおきたいと考えていたからだ。

 しかし、初戦も第2戦も先制を許し、同点に追いつくも試合終盤に突き放されるという不甲斐ない戦いぶりを演じて2連敗。6試合どころか、わずか3試合で大会を去ることになった。

 過去3大会はいずれも決勝トーナメントに進んでおり、グループスステージ敗退は初めてのこと。指揮官に対しては当然のように批判が集中した。勝利をつかみ損ねた采配ミスやチームマネジメントの失敗を指摘する声は多い。

 そうした空気は当然ながらタイで戦う指揮官にも選手にも伝わっている。『消化試合』ではあるものの、日本がカタールとの最終戦(第3戦)でどんな戦いを見せるのか。注目された。

 これまで通り3-4-2-1のフォーメーションで試合はスタートした。3バックは右から橋岡、立田、町田、両ワイドは右に相馬、左に杉岡、ドイスボランチが田中駿と田中碧、2シャドーは旗手と食野、1トップが小川という構成。そして開始直後から攻撃姿勢を示すと、前半のうちに何度も決定機をつかんだ。杉岡、旗手、食野、田中駿が次々とシュートを放つ。ただ、いずれもネットを揺らせず、過去2戦と同様に決め切れない時間が続いた。

 多くのチャンスを逸したあと、前半終了間際だった。ボールの争奪戦で田中碧が伸ばした足が飛び込んできた相手と接触。故意ではないが、不運にも足裏が相手の足に接触する形になってしまった。主審がオンフィールドレビューを行ない、映像を確認。レッドカードが提示され、田中碧が退場処分になった。以降、日本は一人少ない状態で戦うことになってしまった。

初めて先制したが追いつかれる

 ハーフタイムを挟み、後半の日本は旗手に代えて齊藤未月を投入、フォーメーションを4-4-1に変更した。4バックは右から橋岡、立田、町田、杉岡、MFは右から相馬、齊藤、田中駿、食野、1トップに小川。急造の陣形ながら、MFの4枚、DFの4枚で構成する2ラインでしっかりブロックを築き、カタールの攻撃を封じて攻撃に転じていく形が奏功した。「退場者が出てからのほうが、全員が一人多くという運動量を出して走れていた」と田中駿はフラッシュインタビューで話していたが、相手が前半に比べて攻撃的になったことを考慮しても、日本は良い形で何度も敵陣に攻め入った。

 そして73分、一人少ない日本が均衡を破る。食野の横パスを受けた小川が素早い振りで眼前のDFの股を抜くようにシュートを放ち、ネットを揺らした。今大会初めて日本が先制。そのまま試合をクローズさせられればよかったが、そうはいかなかった。得点からおよそ3分後、またしても不運に見舞われる。ジャドゥアにエリア内への進入を許し、齊藤と橋岡が対応。2人の間を割れた瞬間、齊藤が踵を返して背走すると、シュート体勢に入ったジャドゥアが振り上げた足に接触してしまった。

 主審の判定はPK。VARルームとのやりとりはあったものの、ジャッジは覆らず、アルアフラクに決められて、日本はあっという間に同点に追いつかれた。

 その後はオープンな展開となり、互いに攻め合うことになったが、ともに欲した2点目は生まれず。日本はせめてもの意地を見せるため、カタールは決勝トーナメントに行くために勝利を求めたが、試合はドローで決着することになった。結局、半年後の東京五輪での金メダル獲得を目標に掲げている日本は、アジアの大会で未勝利という屈辱的な結果に終わった。

「しっかりと反省しなければいけない。私も含めて、みんなでこの大会を反省して、過去を変えられないので、ここからチームが成長、選手が成長してくれるために、この大会の経験を生かしたいと思います。
 時間が限られているのは最初から分かっていること。その都度、その都度、ベストを尽くして活動を続ければ、必ず最後に大きな成果につながると思ってやっています。今回は本当に残念な結果に終わりましたけど、最後に結果を出せるように、しっかり積み上げていきたいと思います」

 試合直後のフラッシュインタビューに答える形で、森保監督は反省と展望を語った。その都度その都度、ベストを尽くしているというのは本音に違いない。ただ、ベストを選択しても結果が出るわけではない。少なくとも、今大会ば失敗に終わった。五輪本大会まで、約半年。指揮官も、多くの選手も、「この悔しさを糧に」という趣旨のコメントを残す中、その思いを今大会に参加していない選手たち、例えば本大会で主軸を担うと目される海外組が共有できるのかどうか。

 そもそも予選がなく、早い段階から五輪本大会を見据えて活動し、例えば骨格を決めてチームを肉付けし成熟させられることが開催国のメリットだと思われるが、ほぼそれを放棄した形でチーム作りを進めてきた。むろん、方法は一つではないが、現状ではこれまでの活動はただ点として存在し、線としてしっかりつながっていない印象を受ける。

 指揮官が言う通り、確かに「過去は変えられない」。だが、今のままでは『未来も変えられない』。そう思わせるような歴史的敗北だった。