粘り強い守備で静岡学園の猛攻に耐えていた矢板中央だが、試合終了直前にPKで決勝点を奪われ、初の決勝進出はならなかった。痛恨のファウルでPKを与えたMF靍見拳士朗は悔しさをこらえ、後輩たちにリベンジを託した。

上写真=試合終了直前、ドリブルでエリア内に入ってきた静岡学園FW松村を靍見(6番)が倒してPK。これを決められて矢板中央は敗れた(写真◎小山真司)

■2020年1月11日 全国高校サッカー選手権準決勝(埼玉スタジアム2〇〇2)
静岡学園 1-0 矢板中央
得点者:(静)松村優太

90+4分のラストプレーで失点

 3分と表示された後半アディショナルタイムも2分を経過。静岡学園と矢板中央の激突は0-0でスコアが動かず、PK戦突入かと思われたが、試合終了直前にドラマが待っていた。

 静岡学園MF松村優太が、MF小山尚紀とのパス交換から加速してペナルティーエリア内に侵入。待ち受けていた矢板中央MF靍見(つるみ)拳士朗と交錯した次の瞬間、PKを宣告する主審の笛が鳴った。

「カットインを想定していたけど、相手の足が当たってしまった」

 靍見は、痛恨のファウルの瞬間をこう振り返る。PKを松村に決められ、90+4分に失点。試合再開のキックオフは行なわれず、まさにラストプレーで矢板中央は敗れた。

 静岡学園に試合開始からボールを支配されたものの、統率の取れた守備で粘り強く封じた。ボランチの一角で奮闘した靍見が「相手はドリブルがすごくうまくて、何回かかわされるシーンもあったけど、1枚目、2枚目、3枚目が連動して守ることができた」と語ったように、守備組織は後半、さらに試合終盤に入っても大崩れすることはなかった。

 0-0のまま試合終了直前を迎え、ピッチ内は「このまま耐えてPK戦にもっていこう、という感じだった」と靍見は語るが、最後の最後で守備網を破られた。過去2回、準決勝で敗れている矢板中央は三度目の正直ならず、初の決勝進出を逃した。

 今回の選手権は県予選初戦から失点を重ね、苦戦続き。しかし全国大会に入ると徐々に調子を上げ、3回戦と準々決勝は無失点で勝ち上がり、「試合を重ねるごとに成長できた。選手権はすごいと思った」と靍見は言う。中学時代は埼玉県のジュニアユースSC与野でプレーしており、埼玉スタジアムでの準決勝に勝ち進んで「地元でプレーできたのはよかった」と喜びもかみ締めた。

「いまの1、2年生で絶対に日本一を取ってくれると信じている」

 沈んでいた口調に、少しだけ力がこもった。高校サッカー最後の試合を終え、決勝進出と日本一の夢は後輩たちに託す。

取材◎石倉利英 写真◎小山真司