12月30日に開幕する高校サッカー選手権。夢の舞台に臨む高校生たちに、伝えたいことがある。ピッチに立ったら、すべての瞬間に気持ちを込めてプレーしよう。今でも後悔している、50代間近のおじさんからの教訓です。
『ヤバい』と思っても、時すでに遅し
2-2のまま、PK戦の雰囲気が漂ってきた79分。のちにベガルタ仙台などで活躍する盛岡商のFW平聡が、右サイドからセンタリングを送ろうとするところに、CBの筆者が対応した。
今でも悔やんでいるのは、このときのプレーだ。『これくらいで大丈夫だろう』という感じで、軽くジャンプしながら足を伸ばしただけ。体のどこかに当てていればCKだったはずのボールが、ファーサイドに抜けていった。
『ヤバい』と思って懸命にゴール前に戻ろうとしたが、時すでに遅し。ファーサイドから中央に折り返され、中央から蹴り込まれて3点目を奪われた。残り1分での失点を取り返す余力はチームに残っていなかった。
松江東は翌年も選手権に出場し、筆者も出場したが、やはり初戦で敗れた。3年時にインターハイで1勝を挙げたが、今でも年に数回、『あのとき自分が軽いプレーさえしなければ、チームは逆転するか、PK戦で、選手権勝利をつかめていたのではないか』と後悔する。
説教じみた話になるけれど、明日の開会式から初戦に向けて、徐々に気持ちが高ぶっているはずの高校生たちに伝えたいことがある。
一瞬でも『これくらいでいいか』なんてプレーをしたら、一生後悔するよ。皆さんは、一緒に練習を積んできたチームメイトを、予選で下してきた各都道府県のライバル校を、もっと言えば、全国の高校サッカー選手を代表してピッチに立つのだから、すべての瞬間に気持ちを込めてプレーしてほしい。
今大会の応援リーダーを務める日本代表DF長友佑都が、大会ポスターに手書きで記しているメッセージは、まさにその通りだと思う。
もっと!
もっと走れる もっと戦える
仲間のために 家族のために
自分自身の夢のために
選手の皆さん、頑張って!
文◎石倉利英 写真◎BBM