12月30日に開幕する高校サッカー選手権。夢の舞台に臨む高校生たちに、伝えたいことがある。ピッチに立ったら、すべての瞬間に気持ちを込めてプレーしよう。今でも後悔している、50代間近のおじさんからの教訓です。

上写真=試合終了直前に決勝点を奪われ、初出場初勝利は夢と消えた。右後方でピッチにひざまずいているのが筆者(写真◎BBM)

初出場初勝利に向けて

 2019年12月上旬、J1最終節での横浜F・マリノスとの直接対決で逆転優勝を目指すFC東京が、『最後の1秒まで』というスローガンで機運を高めているのを見たとき、30年以上前の苦い思い出が、久しぶりによみがえった。

『あのとき、なぜ最後の1秒まで全力を尽くさなかったのか』

 筆者は1986年度の第65回全国高校サッカー選手権に、初出場した松江東の一員として出場した。87年1月2日、1回戦の相手は盛岡商(岩手)。会場は、現在は選手権では使用されていない、千葉県の総合スポーツセンター陸上競技場だった。

 第1試合では、インターハイ優勝で初出場の国見(長崎)が、まだ2回目の出場だった地元の市立船橋(千葉)を5-0で粉砕した。勝てば翌日の2回戦で、この国見と対戦する。初出場初勝利に向けてチームは気合十分、先発出場する筆者も、自然と気持ちが高ぶっていた。

 松江東はメンバー全員が1、2年生だったが、盛岡商も先発8人が1、2年生で、勝機はあると思っていた。だが全国大会の雰囲気に慣れないうちに、15分(40分ハーフ)に先制されると、21分にも追加点を奪われ、0-2とリードされて前半を終える。

 ハーフタイムに何を話したのかは覚えていないが、後半は松江東が主導権を握った。46分に追撃のゴールが決まって1点差とする。盛岡商のGKは、のちに鹿島アントラーズなどでGKコーチを歴任し、2020年からサンフレッチェ広島のGKコーチに就任する藤原寿徳。69分には同点ゴールを奪い、完全に流れをつかんでいた。