元サッカー日本代表の鈴木啓太氏が創業し代表取締役を務めているAuB(株)が10月2日、都内で記者発表会を行い、初めての自社開発商品であるサプリメント「AuB BASE(オーブ ベース)」の開発の成功と販売開始を発表した。鈴木啓太氏と言えば、現役引退後、「アスリート時代の経験を、多くの方の健康のために生かしたい」という強い信念のもと、あらゆる競技のアスリートの“便”を集めて腸内細菌を研究している「変わり種社長」として、多くのメディアに取り上げられてきた。そして創業から4年、ついにその信念が、自社開発商品という形で結実。果たして鈴木啓太社長の信念の詰まった「AuB BASE」とは一体どんなものか。

待望の自社商品を手にするAuB(株)の鈴木啓太社長(右)。左は研究部門を統括する取締役の冨士川凛太郎氏

開発商品「AuB BASE」とは?

「腸内フローラの解析をする会社を立ち上げました」

2015年シーズン終了後、鈴木啓太は引退会見の場で、その華やかなサッカー人生の終止符の場にはおよそ似つかわしくない単語を口にした。現役時代、自らの経験から、アスリートのパフォーマンスは腸のコンディションと切っても切れない関係にあると確信しており、引退シーズンとなった2015年10月に、アスリートの腸を研究するAuB(株)を設立。「うんち、ちょうだい!」。自らの人脈を生かしさまざまな競技のトップアスリートにそう声をかけた。記念すべき(?)、一人目の「うんち、ちょうだい!」は、いま話題のラグビー日本代表の“フェラーリ”こと松島幸太朗選手だったという。

便を提供してもらったアスリートには研究結果をフィードバックし、AuBの管理栄養士が腸内環境の改善を意識した食生活をアドバイスしている。昨今の腸内環境への注目も後押しとなり、今ではアスリート側から便の提供の申し出が来ることも多いそうだ。そうやって集めた便は、今では何と500人以上、1000検体を突破した。

集めたアスリートの便を、4年間かけて研究・解析した結果、アスリートと一般の人との腸内細菌に特徴的な差があることがわかった。以下、AuB(株)取締役で、研究部門を統括する冨士川凛太郎博士の言葉だ。

「人の腸内細菌の数は100兆個〜500兆個と言われており、人によって菌の種類も数も異なります。研究の結果、アスリートは一般の人よりも短鎖脂肪酸を作る菌、具体的には“酪酸菌”の数が約2倍ほど多い。それに加えて、菌の種類自体も多様であることがわかりました」

こうして得た知見から、このたび研究成果を形にした初の自社商品サプリメント「AuB BASE」を発表した。多様な乳酸菌とビフィズス菌、そして酪酸菌など29種類の菌を主成分に、菌のエサとなる食物繊維とオリゴ糖を加えたサプリメントだ。「どなたでも試してもらいたいのですが、まずは、日々戦い続けるビジネスアスリートをメインターゲットにしたい。僕も引退してから満員電車で通勤していますが、ポジション争いが大変ですから(笑)」と鈴木社長。10月2日よりクラウドファンディングの「Makuake」で先行販売され、12月初旬から自社ECサイトで販売を開始する予定だ。

AuB初の自社開発商品「AuB BASE」。アスリートの腸内に多い酪酸菌など29種の菌が主成分に含まれている。

現役引退から4年。貫いてきた信念が自社開発製品としてまずは結実した。だが、鈴木社長の情熱が冷める様子は全くない。

「いま現在、アンチドーピング機関にも申請中で、AuB BASEを元にしてトップアスリートからの要望も聞きながら必要な成分を加えていくなど、いろんな可能性に挑戦したいですね」(鈴木社長)

9月24日には、三菱キャピタル(株)、大正製薬(株)、個人投資家を引き受け先とする第三者割当増資を行い、3億円を調達したことも発表されている。「今後はフードテック事業に本格的に参入していきたい」と語る鈴木社長が仕掛ける、次なる一手にも注目したい。

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