ともにJ1昇格を狙う水戸と京都の上位対決は、水戸に軍配。京都は天皇杯2回戦(●0-1)に続き、同じ相手に、同じ場所で苦杯をなめた。ただ、この試合で18歳の上月壮一郎が今季初先発。中田一三監督が「彼のパフォーマンスは非常によかった」と評価したように、随所で持ち味を発揮し、今後のさらなる活躍を期待させた。

上写真=右サイドバックで今季初先発した上月(写真◎J.LEAGUE)

■2019年8月17日 J2リーグ第28節
水戸 3-0 京都
得点者:(水)黒川淳史、オウンゴール、小川航基

「ドリブルで生きてきた」貪欲な18歳

 京都の育成組織で育ったプロ1年目の上月壮一郎が今季初出場。ユースチーム(京都U-18)に所属していた昨季は2種登録され、J初先発を含むリーグ戦2試合に出場した。今季から正式にトップチームの一員となり、この日プロ選手として初めてスタメンに名を連ねた。

 中田一三監督は「コンディションが良かったですし、意欲的で、(試合に)出るのにふさわしい状態」と、上月を先発メンバーに選んだ理由を明かす。

 上月本人は、1年以上遠ざかっていたJリーグでのプレーを「心は全然リラックスしていたけれど、体は緊張していたんじゃないかな」と振り返る。気温30度を超える夏場のゲームということもあり、「練習試合でも90分出たことがなかった」(上月)という影響からか、85分に足をつって倒れ込み、担架で運ばれた。その後、ピッチに戻っても、苦悶に満ちた表情を浮かべた。

 それでも、「右足も左足もつっちゃったんですけれど、自分ではやり切ったと思っている」と、試合後は充実感をにじませた。

「今まで、どこでもドリブルで生きてきた」と話すように、昨年までは主にサイドアタッカーとしてプレーした。各世代別代表にも名を連ね、一昨年には久保建英(レアル・マドリード=スペイン)らとともに、U-17ワールドカップにも出場している。サイドでの力強いドリブル突破と、強烈なシュートは上月の武器だ。

 この日は右サイドバックでの出場となったが、指揮官からは「ゴール決めろ」と言われていたという。「チームの失点を抑えることが第一だったんですけれど、ドリブルもどんどん仕掛けていく意識はありました」と、攻撃的な姿勢を見せた。前半には、何度か右サイドを突破し、ゴール前へクロスを供給。後半には、FW一美和成からパスを受けて、右足で強烈なミドルシュートを放った。相手DFにブロックされたものの、「(ボールが足にうまく)あたったので、(ゴールが)あるかな、と思った」と話すように、良い感触は残った。

 テンポ良くショートパスをつないで攻撃を仕掛ける京都の中で、「パスは一番ヘタくそ」という認識を持つ。それだけに、この試合では「あまり難しいことはせずに、簡単にさばく」ことを意識したが、「ここでパスばっかりしていても、自分のアピールにはならない」と、無難なパスを出すことに終始するつもりもない。

「チームから求められていることは、やはりドリブル。サッカー選手なので、スタメンで出ないと評価はされないし、試合に出るだけでも意味がない。ゴールとかアシストという結果しか求めていないので、次こそは結果に絡めるように頑張りたいと思います」

 中学時代から在籍するクラブをJ1に昇格させるため、常に貪欲な18歳はこれからも出番と結果を求める。

取材◎小林康幸

関連記事

サッカーマガジン 2019年9月号