上写真=完封勝利に貢献したFC東京の渡辺剛(写真◎J.LEAGUE)
■2019年8月10日 J1リーグ第22節
FC東京 1-0 仙台
得点者:(F)D・オリヴェイラ
責任と覚悟を持ってプレー(渡辺)
FC東京はゲームの進め方が手堅く、後ろで構える守備陣も堅固だ。ベガルタ仙台にチャンスらしいチャンスをほとんど与えなかった。
前半は自陣で守備ブロックを築き、2トップのスピードを生かしたロングカウンター狙い。凡事徹底していた。敵将の渡邉晋監督も苦笑するしかなかった。
「前半、あそこまで後ろに下がるとは思わなかった。はいどうぞと、ボールを渡されたら、こっちがボールを持たなければ、サッカーになりません。リスク管理しながら、ボールを保持して攻めていこうと思っていました」
それでも、わずかなスキを突くのが首位を走るFC東京のしたたかさ。大きなチャンスは後半の1回のみ。東慶悟のパスから永井謙佑が抜け出し、ペナルティーエリア内でファウルを誘ってPKを獲得。ディエゴ・オリヴェイラのPKは1度ストップされたが、相手GKが蹴る前に前へ出たという厳密なルールの適用になり、蹴り直し。2度目は確実にネットを揺らした。
そして1点を手にしてから、憎いほどの強さを見せつけた。相手が下位チームであれ、上位チームであれ、逃げ切り体勢になれば、きっちり守る術を持つ。とりわけ最終ラインの安定感は抜群だ。FC東京が首位を走る要因の一つだろう。
森重真人や室屋成ら代表クラスが並ぶその4バックのなかに、一人だけプロ経験の浅い選手がいる。大卒1年目のルーキー、渡辺剛だ。
この22歳のCBも、堅守を支える一人として存在感を示している。試合終了間際、仙台のハモン・ロペスに得意の左足でシュートを狙われた場面では、体を張って執念のブロックを披露。相手の武器である左足を警戒し、最後まで集中を切らさなかった。
「あそこで(左足を)振り抜かれると危ないと思って、とっさに体を投げ出しました。いまはピンチのところで体を張って守れていると思います。ゼロに抑えれば、負けることはありません。1年目から首位チームの試合に出させてもらっているので、責任と覚悟を持ってプレーしています」
新人とはいえ、守備に厳しい目を持つ長谷川健太監督が起用しているのだから、能力は推して知るべし。
渡辺はFC東京U-15深川で育ち、山梨学院高、中央大を経由して加入した苦労人だが、クラブへの思いは人一倍強い。あと一歩で優勝戦線から脱落し、悔し涙を流してきたクラブの歴史を知っている。だからこそ、リーグの終盤戦に向けて気を引き締める。
「優勝するためには、失点を減らしていかないといけない」
森重の背中を見ながら成長し、精神面も安定してきた。試合に入る準備もすっかりプロのそれ。いまやルーキーも首位チームの欠かせない戦力になっている。
試合後、ホームの味スタには「ツヨシ、ツヨシ」のコールが響いていた。
取材・文◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE