8月1日に沖縄県の「金武町フットボールセンター(ローン)」で『令和元年度全国高等学校総合体育大会サッカー競技 女子』(以下、インターハイ)の決勝が行なわれた。東京都代表の十文字高校を大会初優勝に導いたのは、一人の元Jリーガーだった。

上写真=インターハイ女子決勝に勝利し、歓喜する十文字高校の選手たち。指揮官は胴上げされる(写真◎川端暁彦)

現役時代から「頭の良さ」が売り

 170cmほどの体は男子選手の中では小柄な部類。ただ、女子選手に混じれば最長身の部類である。そんな体がささやかに宙を舞った。かつて岐阜や福島でプレーした元Jリーガー・野田明弘監督に率いられた十文字高校が初めて夏の日本一に輝いた。

 1988年生まれ、今年31歳になる野田監督が福島で現役を退いたのは一昨年末のこと。主に右サイドバックとして活躍した彼のことを、広島ユース時代の恩師である森山佳郎氏(現・U-17日本代表監督)は「身体能力のなさを頭の良さと右足キックの精度で補って余りある選手だった」と評している。まさに「頭の良さ」が売りだっただけに、元より指導者としての期待感もあったようだ。

 本人も「もともと教員をしながらサッカーの指導もしたいと思っていた」と、指導者としてやっていく希望を持って早稲田大学時代に教員免許も取得済みだったため、引退翌年から十文字高校女子サッカー部のコーチに着任。なでしこジャパンの横山久美など多くの好選手を輩出し、冬の選手権での優勝経験もある名門チームで指導に当たり、今年から監督に就任することとなった。

 そして迎えた最初の大舞台が今夏の全国高校総合体育大会。昨年も4強まで勝ち残っていたが、野田監督は「4強より上は相手を観て判断するところができないと(勝つのは)難しいと思っていた」と、個人の戦術的な判断力を磨く部分に注力してきた。また昨年の二つの全国大会でいずれも肉弾戦での劣勢を痛感していた選手からの提案を受け入れて体幹トレーニングを導入するなど、フィジカル面の強化にも注力してきた。

 そして迎えた大会決勝では総体で過去5度の優勝を誇る日ノ本学園高校を熱戦の末に1-0と撃破してみせた。決勝点は選手たちに自分で考えることを促し、さまざまなトライをさせていたセットプレーから相手を完全に出し抜いた形で、指導の成果が出た形。正式に監督へ就任した4月から数えると、わずか4カ月での日本一タイトル獲得となった。

 胴上げされた野田監督は、優勝という結果について「出来過ぎです」と言いつつ、「文武両道で(冬の選手権で)日本一にもなった十文字の伝統を守るという意識を持ちつつやってきた。サッカーだけでなく、人として、高校生として成長させることをこれからもやっていきたい。これからも選手たちの日常に携わりながら、ちょっとでも女子サッカーに貢献できれば」と、満面の笑顔を浮かべた。

文◎川端暁彦

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