先制したのは栃木だったが、横浜FCは下を向かなかった。広島から移籍してきたばかりの皆川佑介が先発し、同点に追いつくFKを獲得するなど、2得点に絡む活躍で逆転勝利を飾った。

上写真=加入直後の試合で早速、自身の力を示した皆川(写真◎J.LEAGUE)

■2019年7月20日 J2リーグ第23節
 横浜FC 2-1 栃木
 得点者:(横)レアンドロ・ドミンゲス、斉藤光毅  (栃)大﨑淳矢

同点&逆転ゴールをお膳立て

 横浜FCの2得点は、いずれも見事なゴールだった。レアンドロ・ドミンゲスのFKはクロスバーの下を強く叩いて、ゴール左隅に決まった。斉藤光毅のゴールは、本人も「自分でもびっくりした」というほど、強烈な一撃だった。

 その2ゴールをお膳立てしたのが、この夏に加入したばかりの皆川佑介だった。同点のFKは、皆川がロングボールを受けた際に誘発したファウルで得たものだった。斉藤の逆転弾は、ロングボールのこぼれ球をエリア内でしっかりとキープし、「セカンドボールにいち早く反応できたし、自分で行こうかとも思ったけど、周りも見えていたので」と、丁寧に仲間につなげて引き出したものだった。

 横浜FCの最前線には、今季ここまで20試合で11得点のイバが君臨してきた。だが、この日はその前線の柱がプライベートな事情でノルウェーへ一時帰国し、合流が試合前日になったためにコンディションを考慮してベンチ外。代わりに前線で攻撃に核となったのが、身長191センチの戸島章と186センチの皆川による迫力ある2トップだった。

 このツインタワーを生かすように、横浜FCの攻撃はシンプルにロングボールを送り込む形が多かった。受け手となった皆川らには、栃木の3バックもハードな当たりで対処した。荒っぽいタックルを受けて皆川がグラウンドに倒れ込む場面も散見。さらに試合途中から皆川が1トップを務めるようになると、まずます厳しく当たられるようになった。

 だが、「そういうのには慣れていますから」と意に介さず黙々とプレーし、皆川は前述のとおり、同点を導くFKの機会を得た。言わば、間接的なアシストだ。そしてポストプレーで周囲をうまく使う意識で、逆転ゴールも生んだ。敵将、栃木の田坂和昭監督も「単純に向こうが入れてきたボールに対して苦労した。特に皆川を潰せなかった」と、敗因の一つにその存在を挙げている。

 かつては日本代表に選ばれたこともあるFWだが、今季広島ではリーグ戦5試合の出場にとどまっていた。そこでこの夏、新天地へ移籍を果たし、初めての試合で起用に応えた。まさしく一発回答。ただし、当の本人は「今週はイバがいなかったり、いろいろな関係で自分が出させてもらいましたけど、本当のレギュラー争いはここからなのかなと思います」と、気持ちをまったく緩めていない。

 広島では出番が限られたていたが、移籍直前まで練習試合などでプレーしていたために現在のコンディションにはまったく問題ないという。唯一心配なことと言えば「(移籍に伴う引っ越しで)長距離運転してきたことですかね。その疲れだけです」と笑う。

 皆川は、新天地で上々のスタートを切った。それはつまり横浜FCにとってシーズン後半戦に向けた上々のリスタート、ということでもある。

文◎杉山 孝 写真◎J.LEAGUE

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