スコアレスドローで引き分けた開幕戦以来、今季2度目の多摩川クラシコはJ王者・川崎フロンターレの完勝に終わった。首位・FC東京のホームに乗り込んだ試合で、持ち味を存分に発揮。パスワークで押し込み、ボールを失えば高い位置からのプレスで即座に回収。攻守両面で相手を上回り、首位チームの追撃態勢を整えた。

上写真=多摩川クラシコに勝利した川崎F。これでJリーグでの通算対戦成績は川崎Fの13勝7分け10敗となった(写真◎J.LEAGUE)

■7月14日、J1リーグ第19節
 FC東京 0-3 川崎F
 得点者:(川)小林悠、齋藤学、阿部浩之

3連覇への道をひらく3得点

 J王者・川崎フロンターレが、首位を走るFC東京を破った。手にしたのは、ただの勝ち点3ではない。多摩川クラシコのライバルに勝利したという点で大きな意味を持つのと同時に、選手層の厚さ、そしてリーグ連覇中のチームの地力を満天下に示したことが大きかった。

 先制点はセットプレー。この日ドイスボランチの一角で先発した下田北斗が蹴ったCKを小林悠が豪快に決めた。左CKの場面で、ゴールから遠ざかるアウトスイングのボールを、競り合うFC東京守備陣よりも高く飛び、頭でボールを叩きつけた。自身のJ1通算100ゴール目でもあった。

「セットプレーの練習はかなりしていましたし、うまく相手を外せて、良いところに入れました。北斗のボールも良かったし、キックの精度も良かった。セットプレーで決められると、チームが楽になる。強いチームはセットプレーが強いので、これからも試合でもセットプレーでも取れるようにしていきたい」(小林)

 加点は後半。らしいパスワークで中央を破った。中村憲剛がタイミングを見計らってエリア内の小林へパス。そのボールを小林がダイレクトではたくと、左サイドからエリア内へ進入していた齋藤は押し込むだけでよかった。

「(小林)悠くんのパスがすごくてびっくりして。北斗も2アシストしたし、普段(試合に)出ていない僕や阿部(浩之)くんが結果を残すことが、またチームが上に上がっていくことにつながると思う。点を取っただけでは、自分もまだまだだと思っています」

 2点目を決めた齋藤は層の厚さについても触れ、そのことがリーグ3連覇を目指すうえでプラスに働くと言った。

 勝負を決定づける3点目は、王者チームのアグレッシブさと守備面の長所を見せつける得点だった。齋藤が抜け出しながらGK林彰洋との1対1を決め切れず、一度はシュートを弾かれた。FC東京のCB森重真人がこぼれ球を拾って小川諒也につないだが、その瞬間を川崎Fの選手たちは見逃さなかった。

 小林と阿部が猛然どダッシュしてボール狩りを敢行。やや逸れた小川へのパスをカットするや阿部→小林→齋藤→下田とつないで、最後は阿部が正面右から左足で巻くようにシュートを放ち、ネットを揺らした。

「チームとして良かった。3点取れたことのも無失点で終われたのも良かった。次につながるような試合ができたと思います。攻守にいい距離感でプレーできていた」

 特筆すべきシュートスキルで相手の心を折るゴールを決めた阿部は振り返った。

これが本当のフロンターレ(小林)

 1点目はセットプレーから。リーグ戦ではこれまであまり出番がなかった選手、下田がアシストして生まれた。

 2点目は中央突破。フィニッシュは齋藤というこれまでジョーカーとしての起用が多かった選手が先発起用に応えて決めている。

 3点目はプレスから二次攻撃で取り切った形。積極性とあきらめない姿勢をピッチで示し、ゴール前に人が殺到。最後は今季、出場機会になかなか恵まれない阿部が仕上げた。

 なぜ、川崎フロンターレがリーグ連覇を成し遂げているのか。その理由を雄弁に物語るような快勝劇。

 鬼木達監督は勝利のポイントについて、次のように語っている。

 セットプレーについて。「セットプレーでなかなか得点を取れていなかったので、とにかくコーチ陣も含めて、かなり多くの時間を費やしてきました。こういうビッグゲームでは、(セットプレーが)大事になると認識していたので、その意味で、戦略のところと、選手がそれを思い切って実行してくれたと思っています。非常に良かった」。

 選手起用について。「単純に前の選手(=攻撃の選手)は練習試合で非常に良かったので、結果を出した選手たちが(今日の試合に)出ています。それともう一つは今日のゲームは勝っても負けてもターニングポイントにしたいというゲームでしたので、その部分で前面に気持ちを出してくれました。それはチームで取り組んだ結果だと思っています」。

 首位チームとの一戦に並々ならぬ意欲を燃やし、見事な勝利で勝ち切った。やはり今回得た勝ち点3は、ただの3ポイントではない。

「こういう勝負どころで勝つこと、こうやって優勝してきたんだなと実感できた試合だったし、(後ろに)引かずに前からプレスをかけて戦うことができた。試合が終わったあとに、みんなで『これ、これ』と話していたし、これが本当のフロンターレだと思う。こういう大事な試合で勝つことができて良かったと思います」

 キャプテンの小林はそう言って会心の勝利を振り返った。

 この日の結果で、川崎Fは1試合消化が少ない状況ながら、首位FC東京に勝ち点4差の3位になった。2位横浜F・マリノスとは1ポイント差。J史上2チーム目のリーグ3連覇達成へ視界良好――。そんな印象を抱かせる大きな、大きな1勝になった。

取材◎佐藤 景 写真◎近藤俊哉

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