浦和が零封勝ちを飾った。42分に興梠慎三の技ありのシュートで先制すると、後半はゲームの主導権に握った。51分に仙台の椎橋慧也が退場処分となった影響も大きかった。数的優位を生かしてパスを回し、リスクを回避して1点のリードを最後まで守り抜く。ホームでは仙台にいまだ無敗。この日、不敗伝説の継続に大きく貢献したエースの仕事ぶりは圧巻だった。

上写真=歴史を塗り替えた興梠(写真◎J.LEAGUE)

■2019年7月6日 J1リーグ第18節
 浦和 1-0 仙台
 得点者:(浦)興梠慎三

超えないといけない記録だった(興梠)

 浦和の歴史を塗り替える通算92点目は、華麗なループシュートで決めた。42分、武藤雄樹のスルーパスで裏に抜け出した興梠は足元に入り過ぎたボールを左足でぐんと前に運ぶ。日本代表GKシュミット・ダニエルが前に出てくる動きを冷静に見て、右足ですくい上げるようにボールを浮かし、相手の頭上を抜いてみせた。

「2タッチ目でループしかないと思った。いま思えば、すごく背の高いGKだったのに、よく打ったなと思います。ペナナカ(ペナルティーエリアの中)では遊びが必要。余裕がないと点は決められない」

 今季はリーグ戦で5試合、ゴールに見放される時期もあったが、徐々に調子は上向いてきた。7年連続で仙台からゴールを奪うなど、この日もお得意様の前でひと仕事こなした。

「メディアで仙台キラーと言われていたのはプレッシャーだった(笑)。きょうは決めないといけないなって。相手は自分に厳しくきていたけど、そこで何もできないのか、点を取るのか、それは自分次第。この状況で点を取った自分をほめてあげたい」

 ミスターレッズと呼ばれる福田正博氏の持つ得点記録を抜き、堂々のクラブ歴代最多得点者となった。13年に鹿島から浦和へ移籍し、6年連続で2ケタ得点をマーク。32歳はまだ老け込む年齢ではない。ここから、まだまだ浦和で得点を重ねていくつもりだ。

「(福田さんの得点は)超えないといけない記録だと思っていた。一つの目標にしていたので、本当にうれしい。次の目標はサポーターの心を動かすこと。タイトルをいっぱい取りたい」

 浦和のユニフォームに袖を通して7年目。新加入会見で「背番号30といえば、興梠慎三と呼ばれようになりたい」と話していたが、いまはみんなそう思っているはず。誰もが認める浦和の看板エースだ。近い将来、浦和にとって「30番」が特別なナンバーになる日がくるかもしれない。

取材◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE