今回の女子ワールドカップ期間中、WEBサッカーマガジンでは日々野真理さんによる現地リポート「なでしこ観察日記リターンズ」をお届けします。連載第5回は、今大会初勝利を挙げた第2戦から、グループ最大の難敵イングランドとの第3戦へと向かうチームの様子をお届け。日本時間の明日20日早朝キックオフです!

上写真=イングランド戦の前日会見には高倉麻子監督と中島依美選手が出席。難敵との戦いへの決意を語った(写真◎Getty Images)

[6月14日]
今後に期待が膨らむ勝利!

 グループステージ第2戦、スコットランド戦に2-1で勝利した、なでしこジャパン。
 試合前、会場に入る段階で選手たちの表情が全く違って見えて、試合中継の準備をする、こちらにまで緊張が伝わってきました。
 前夜、選手同士で深く話し合いが行なわれたこともあり、ピリリとした空気。『全員でこの試合に絶対勝つんだ!』と、思いを一つにして臨むことができたようです。特に鮫島彩選手の表情が、いつもと少し違っていて、見ているこちらも、こみ上げるものが…。彼女が映し出されたモニターに向かって「頑張れ!」と心の中でつぶやきました。
 岩渕真奈選手は、自身3度目のワールドカップにして初のスタメン出場。試合前に「まず何よりもゴール。全員で戦うけれど、ピッチに立つ11人が責任を持って全力を出し切ることが大切」と意気込みを語っていましたが、鮮やかな先制点は、まさに有言実行。エースの仕事をして、チームを勢いづけました。
 10年ほど彼女を取材していますが、これまで、特にワールドカップの過去2大会と比べて、今大会は明らかに違う立ち位置と覚悟を持って臨んでいる姿が印象的で、とても心強い存在です。試合後は「みんなの思いが乗ったゴールでした」と、いつもの屈託のない笑顔でインタビューに答えてくれました。
 菅澤優衣香選手は前日会見で「自分はピッチ外で何か言うタイプではない。ピッチの上で表現したい」と語っていた通り、プレーで頼もしくチームを引っ張り、最年少の遠藤純選手も、岩渕選手のゴールをアシストする冷静さを見せるなど、それぞれがしっかり仕事をしての勝利。まだ、ここから厳しい戦いが待っていますが、今後に期待が膨らみました。
 解説の澤穂希さんとともに、笑顔で試合を振り返りながら車でホテルに戻った後は、イングランドーアルゼンチン戦をテレビ観戦。そして、またまた次の開催地への移動に向けて、荷物のパッキング!

[6月15日]
なでしこ伝統の誕生祝い

 早朝の飛行機に乗って、肌寒かったレンヌから暖かい、いや、暑いニースに移動。
 レンヌからニースの直行便が、この便しかないこともあり、日本人のメディア、関係者の多くが同じ飛行機に乗っていました。他の乗客は「なぜ、こんなに日本人が?」と不思議だったようです(笑)。でもフライト中、機長さんから「ワールドカップでの日本チームの健闘を祈っています」という粋なアナウンスがあり、徹夜の疲れも吹き飛ぶほどうれしい!
 到着後はコートをしまい、スーツケースから半袖のシャツを出して着替えると、まず街を見て回ることに。ビーチの近くには大会を盛り上げるファンイベントのエリアや、宣伝カー?(写真)に乗っている女性もいて、歓迎ムードが漂っていました。
 午後は前日の試合に出なかった、または出場時間が短かった選手のみがトレーニング。小林里歌子選手は練習後、「何もつかんだわけではないですから」と冷静に振り返りつつ、「『24人』全員で」と口にしました。今大会のメンバーに選ばれながらも、直前に負傷離脱してしまった植木理子選手とともに戦っている気持ちが現れたコメントでした。
 その日の夜は、15日が誕生日の清水梨沙選手、16日が誕生日の鮫島選手のお祝いで、いろいろな『出し物』が披露され、みんなが笑顔に包まれたようです。誕生日の出し物は、歴代なでしこの恒例行事。しっかり受け継がれているようですね。

大会のロゴがあしらわれた宣伝カー? のようなものがニースの街に(写真◎日々野真理)

[6月17日]
大事なのは『走りやすさ』

 前夜の他グループの試合結果を受け、日本の決勝トーナメント進出が決定! まずはホッとした、というのが正直なところ。
 この日の練習は完全非公開で、取材は練習後のみ。オフ明けとあって、再びギアを入れ直すかのように、今大会に入ってからでは最長となる、約2時間の練習でイングランド戦への準備が進められました。完全非公開のため、練習中の様子は分かりませんでしたが、会場入りする際に宇津木瑠美選手が不在だったこと(ホテルに残ってリハビリと広報担当者の方が説明)、練習後に姿が見えなかった長谷川唯選手が、途中から別メニューで、先にホテルに戻ったと伝えられたことが心配…。

 練習後は急いでイングランド戦の会場となるスタジアム、スタット・ドゥ・ニースに行って、フジテレビの日本時間夜のニュース「Live News α」のリポート。さらにスタジアム内で、試合当日のリポートポジション、試合後のインタビューまでの動きを、会場担当者の方と細かく打ち合わせ。W杯は広いスタジアムを急いで移動するので、いつだって靴は『走りやすさ』最優先です。勝利インタビューとなりますように!

イングランド戦の会場となるニースのスタジアム。フランスの青い空も素晴らしい!(写真◎日々野真理)

[6月18日]
「とにかく全力で戦う!」

 イングランド戦前日。練習は冒頭15分間のみが公開されました。練習後、「次(ラウンド16)の相手がどうこうと、器用に計算して狙えるものではないので、とにかく自分たちが勝利することに集中したい」と語ったのは、守護神の山下杏也加選手。
 午後には公式会見が行なわれ、高倉麻子監督と中島依美選手が笑顔で登壇。高倉監督は「明日の結果でグループの順位が決まるけれど、とにかくイングランド戦に勝利することを、まず考えて。グループステージ突破は一つの目標であり、うれしいですが、目指しているところはもっと上にある。この大会で選手、チームが1試合ごとに成長していけるように、とにかく全力で戦いたい」と語りました。

 中島選手は、初めての会見に少し戸惑い気味。それでも「本当に、いろいろな人たちに支えられて、応援してくれる人たちに感謝したいです。このチームで優勝を勝ち取るために、切磋琢磨してやっていきたい。チーム全員が絶対に勝ちたいという気持ちで、同じ方向に向いて、イングランド戦を勝利で終われるように臨みたいと思います」と、引き締まった表情で意気込みを語りました。自身初のW杯ですが、ピッチ内外で欠かせないチームの主軸。イングランド戦ではゴールも期待しています!

 夜にはイングランドのフィル・ネビル監督の公式会見も取材。一つひとつの質問にていねいに答える様子からは、チーム状態への自信が伝わってきましたが、どうなるか?

 さて、イングランド戦は日本時間20日早朝4時キックオフ。今回もフジテレビが3時50分から、地上波で生中継します。勝てばグループ首位、引き分けなら2位で、負けると、同時刻キックオフのアルゼンチンースコットランド戦の結果次第で、2位か3位に。決勝トーナメントにはずみをつける勝利の喜びの声を、私のインタビューで日本の皆さんにお届けしたい! ぜひ声援を送ってください!

文◎日々野真理 写真◎日々野真理、Getty Images

今大会4試合目となるニースでの試合。イングランドは、ここで戦うのは2試合目(写真◎日々野真理)

ニースの海岸にあったモニュメント。イングランド戦は21時開始のナイトゲームで行なわれる(写真◎日々野真理)