浦和が逆転勝ちし、ホームで4戦ぶりの白星を挙げた。18分、安庸佑にゴールを献上したが、1点を追う31分に宇賀神友弥の得点で追いついた。同点で迎えた終了間際、カウンターから興梠慎三が決勝点をマーク。興梠はJ1通算140ゴールで歴代6位となり、浦和通算得点も福田正博氏に並び、トップタイの91ゴールとした。
 大槻毅新体制は初陣から2戦連続で後半アディショナルタイムにゴールを奪い、負けなしの「ミラクル劇場」が続いている。

上写真=終了間際のゴールで鳥栖を破り、サポーターと勝利を喜ぶ浦和イレブン(写真◎J.LEAGUE)

■2019年6月15日 J1リーグ第15節
浦和 2-1 鳥栖
得点:(浦)宇賀神友弥、興梠慎三 (鳥)安庸佑

「きょうはジョーカーでいく」

 リーグ戦で浦和の勝利を称える歌が、埼玉スタジアムに響き渡ったのはいつぶりだろうか。さかのぼること約2カ月。4月20日の神戸戦(○1-0)である。

 6月15日は、試合前から客足も遠のく大雨(2万8081人)。大槻毅・新監督はピッチサイドぎりぎりまで出て、派手なジェスチャーを交え、大きな声を張りげる。感情的に見えて、采配は実に冷静で綿密。選手交代については多くを語ろうとはしないが、ゲームの展開を読みながら的確に切り札を投入した。

「終盤、オープンな展開になると予想していた」

 スピード自慢のドリブラー、マルティノスの出番である。試合前から「きょうはジョーカーで使うから準備しておいてくれ」と前もって本人に伝えていた。この采配がぴたりと当たる。後半アディショナルタイムに自陣でボールを持ったマルティノスは、ドリブルでぐんぐん前に進み、あっという間に敵陣に侵入。ラストパスは相手に当たったが、うまくボールが興梠の前にこぼれた。

「いい感じに行ってくれたよ。結果、オーライだね」

 本人はジョーカーではなく、スタメンへのこだわりを口にしていたが、この日はこれで結果、オーライ。もちろん、大槻監督の口からそんな言葉は出てこない。すべて計算どおりと言ったところか。

 前節の川崎F戦では途中から投入した森脇良太が、終了間際に同点ゴールを挙げた。交代策が2試合連続ではまれば、偶然とは言えないだろう。

 ただ、指揮官は一歩引いて、冷静に現状を分析することも忘れない。内容に満足しておらず、「もっと積み上げていかないといけない」と勝って兜の緒を締めた。ひとまずホームの連敗は「3」でストップし、9位に浮上した。

取材◎杉園昌之