首位・FC東京と5位大分の上位対決は、FC東京が勝利した。この一戦で躍動したのが、2得点を挙げた久保建英だ。J3時代に対戦経験がある大分・藤本憲明も、その才能の大きさをあらためて実感したという。

上写真=久保(左)のドリブルを藤本が追走(写真◎J.LEAGUE)

■6月1日 J1リーグ第14節
FC東京 3ー1 大分
得点者:(F)橋本拳人、久保建英2 (大)オナイウ阿道

飛び込ませない雰囲気がある(藤本)

 奪って、運んで、自ら決める。戦況を見極めるクレバーさと判断の早さ。ボールを奪う力と運ぶ能力。そして思い切りの良さとシュート精度の高さ。年齢についての議論は不要だろう。久保建英はいまや誰もが認めるFC東京の中心であり、欠かせない存在だ。
 
 この日の試合でも2得点。1点目は自らボールをインターセプトしてそのままドリブルで持ち込み、左足で決めた。2点目は後半アディショナルタイムに相手のミスを見逃さず、判断よくゴールをスコアしている。

 試合後、長谷川健太監督は、その存在の大きさを認めた。「コパ・アメリカで抜かれるのは正直、痛いですね」という試合後のコメントは本音に違いない。久保が日本代表に招集されているコパ・アメリカ期間中に(6月14日~7月7日)、FC東京はJ1とルヴァンカップを合わせて、少なくとも3試合、最大で6試合を戦うことになる。実際、指揮官としては頭の痛いところだろう。
 
 敵として対峙した大分の藤本憲明も、久保の存在の大きさを実感したという。それはある種の『凄み』であり、2年前に対戦したときには感じなかったものだ。
 
「J3時代に対戦したときもうまかったですけど、(今は)体が強くて倒れないですし、何よりも飛び越せない雰囲気がありましたね」

 鹿児島に在籍していた2017年。藤本はFC東京U-23の久保と1度、リーグ戦で対戦している。ともに先発フル出場を果たし、藤本は1得点をマーク。久保は無得点に終わり、結果は鹿児島の勝利だった。藤本の当時の記憶では、うまさは確かに感じたものの、怖さまでは感じていなかったという。だが、この日、久々に対戦した久保は違った。
 
「ボールは取れそうな場所に置いているんですけど、顔を上げてこちらの動きを見ているし、取りに行けばかわされると思わせる雰囲気があるというか。その自信もあるんでしょうけど」

 大分の選手たちは、久保の利き足である左足を警戒し、左足でシュートを打たせないように守ろうと、ミーティングで確認していた。「右足で打たれるなら仕方がない」と、ある種割り切って試合に臨んでいたが、封じようと試みたその左足で2度、ネットを揺らされてしまった。

「右足もうまくて、そっちもあるんか! と思いましたし。それで結局、警戒していたのに左足でやられてしまった」

 今季好調な大分をけん引する一人で、チャンスメーカーとして際立った働きを見せている松本怜は、久保についてこんな感想を口にしている。

「Jリーグでも、あれだけ積極的に仕掛ける選手はそうはいないと思いますね」
 
 この試合では左のアウトサイドに入り(後半途中からは左サイドバック)、右MFの久保と何度もマッチアップした松本は、積極的な姿勢がとくに印象的だったと話した。
 
 藤本は目下、7ゴールを挙げてJ1の得点ランキングのトップに立つ。松本は、チーム最多のアシストとクロス数を誇り、好調大分を支える。そんな二人にとっても、この日の久保は強い印象を受ける選手だった。
 
 むろん、二人はともに、今回の借りを返すつもりでいる。シュート0本という悔しいゲームを振り返りながら、藤本は言った。

「自分は、まだまだ。ここからもっともっと、やっていかないと」
 FC東京のファン・サポーターのみならず、まもなく代表選手として日本中の注目を集めることになる若き才能は、対戦相手を刺激する存在にもなりつつある。
 
取材◎佐藤 景 写真◎J.LEAGUE