前節の神戸戦同様に、3センターハーフではなく、1トップ下+ドイスボランチに中盤の構成を変えた横浜FMは、終始ボールを保持し、中盤の構成力と積極性で磐田を圧倒。試合開始直前に気温が35度を越える酷暑のゲームでボールを走らせると、前半に先制、後半に加点、そしてダメ押しゴールを記録する理想的な展開で勝利を手にした。

上写真=先制点を挙げたM・ジュニオール(写真◎J.LEAGUE)

■5月26日 J1リーグ第13節
横浜FM 4ー0 磐田
得点者:(横)M・ジュニオール、仲川輝人、E・ジュニオ2

充実の内容で4-0の圧勝

 ボールを握る横浜FM。プレスからシンプルにカウンターでゴールを目指す磐田。試合前から予想された展開は、その半分だけが現実となった。磐田は相手のスピードを警戒するためか、コンパクトな陣形を取れず、その結果、プレスが機能しなかった。一方で、横浜FMは面白いように『間』でパスを受けてはつなぎ、ボールのみならず、試合の主導権も握っていった。

 先制点は40分。この日トップ下を務めたマルコス・ジュニオールがネットを揺らす。エリア内にいる味方へ送ったループパスは一度、相手DFに阻まれるが、自らこぼれ球を回収してシュートに持ち込み、スコアを動かした。プレー予測と次のプレーに移る速さが際立つゴールだった。

 横浜FMの2点目は後半60分。磐田が攻勢の時間帯に生まれている。磐田のCKの場面で、エジカル・ジュニオのクリアは小さく、エリアの外に構えていた山田大記の眼前に飛んだ。だが、山田がシュートを空振り。こぼれボールに横浜FMの選手がいち早く反応した。
 喜田拓也がダイレクトでボールをM・ジュニオールにつなぎ、カウンターを発動。一斉に横浜FMの選手たちが敵陣へと走り出し、中央を突き進んだM・ジュニオールが右横を走る仲川輝人へパス。最後はエリア内に進入した仲川がDF高橋祥平を冷静にかわして左足で決めた。

 相手のミスを逃さない抜け目のなさと、ボールに反応するスピード、そして集中力という点で横浜FMが磐田を上回っていた。両チームとも、ミスがなかったわけではない。だが、その後の振る舞い、つまりはミスをカバーする意識と判断の早さに違いが出た、そんなプレーだった。

 3点目はティーラトンのクロスが相手CB大井健太郎の手に当たり、獲得したPKをエジガル・ジュニオが冷静に沈めた。さらに4点目は左サイドで相手の背後へと進入した扇原貴宏がM・ジュニオールからの浮き球パスを受けてエリア内脇まで進出し、ゴール前へ送ったクロスをE・ジュニオが丁寧にゴールへ流し込んだ。

 守っても横浜FMは磐田の攻撃を完封。攻守がかみ合った最高の内容で勝ち点3を手にした。

「本当に良いゲームができたと思う。難しい天候の中、チーム全体で最後まで走り切ってくれた。たくさんチャンスをつくり、多くのゴールも奪えた。きょうの選手全員の頑張りは、勝利に値するものだった」(ポステコグルー監督)

 今季開幕からチームの攻撃をけん引してきた三好康児と天野純を直近のリーグ戦2試合でベンチスタートさせ、2連勝と好結果を手にした。試合後の会見で「その選択は難しい判断だったのでは?」と問われると、指揮官はきっぱり答えている。

「難しい決断ではない。まず、三好も天野も水曜日のルヴァンカップに出場していた。自分としては、誰がベストのポジションでやれるかどうかを常に見ている。だから今日のメンバーやフォーメーションで(今後も)固定することも全くない。次の試合に向けて準備するということ。(次に)誰が出るかも、まだ決めていないし、分からない。勝利のために最高のパフォーマンスをしてくれる選手を選びたい。すなわち、決断が難しいということはない」

 ポステコグルー監督の判断はチームに刺激を与え、日々進化させていることが、この日の圧巻のパフォーマンスからうかがえた。

写真◎J.LEAGUE