松本が追いつき、引き分けた。前半は湘南に主導権を握られ、攻守両面で圧倒される。後半もペースは変わらず、0-0の51分には先制点を献上。それでも、ロングボールで敵陣に押し入る戦法を貫き、中盤でこぼれ球を拾い始めると、流れを引き寄せた。最後にチームを救ったのは開幕から眠り続けていた大柄なブラジル人だった。83分に目の覚めるようなミドルシュートで同点ゴールを叩き込んだレアンドロ・ペレイラとは何者なのか。

上写真=初ゴールを記録したレアンドロ・ペレイラ。ここからゴールを量産すると宣言(写真◎J.LEAGUE)

■2019年4月14日 J1リーグ第7節
湘南 1ー1 松本
得点:(湘)武富孝介 (松)レアンドロ・ペレイラ

「出られると思って、ふんぞり返っていた」(反町監督)

 一瞬にしてBMWスタジアムが静まり返った。レアンドロ・ペレイラの右足から放たれた一発は、弾丸のようにゴールネットへ。

「自分でもナイスゴールだったと思う」

 本人も笑みを浮かべて自画自賛。眠れる獅子がようやく目覚めた。
 今季、ブラジルのシャペコエンセから鳴り物入りで加入。J1戦線を生き残るための秘密兵器と言ってもいい。しかし、開幕前のケガで出遅れると、完治後もずっとメンバー外。反町康治監督は、エースとして迎え入れたブラジル人にも特別扱いをしなかった。

「試合に出られると思って、ふんぞり返っていた。だから、ケガが治ってもメンバーに入れなかった。ここ(松本)は違うんだよと。それで逆に闘争本能に火がついたと思う」

 数多のブラジル人助っ人たちと仕事をこなし、チームを作り続けてきた知将の判断は正しかった。5節に初めて先発で起用し、リーグ戦3試合目で結果を残した。

「ブラジル人はフィジカルコンディションが上がってくるといろいろなものがついてくる」

 この日、松本の最前線にそびえ立ったタワーの存在感は際立っていた。190センチ、76キロ。ひょろりと高いのはでない。ユニフォームを着ていても筋骨隆々とした肉体がよく分かる。無骨にポストワークをこなし、自陣から飛んできたロングボールを敵陣に落とした。ゴール以外にもしっかりチームに貢献。途中出場した2シャドーの杉本太郎、永井龍が躍動したのも、このポストマンの働きあってこそだ。

バラのタトゥーと危険な香り

 サッカー王国の名門パルメイラスをはじめ、スポルチなど名の知れたクラブを渡り歩いてきた男は神経も図太い。7節目で初ゴールを挙げても、したり顔だ。

「ゴールはいつか取れると思っていた。今まで所属したクラブでもたくさん点を取ってきた。今季もたくさん点を取る」

 そう言われると、期待したくなる。同じレアンドロでも間違ってはいけない。今季、川崎フロンターレに加入したブラジル人FWはレアンドロ・ダミアン。同じような体格でも、松本のレアンドロ・ペレイラは、またひと味違う魅力がある。
 危険な男にはトゲがあるーー。首元にはバラの花のタトゥーが咲いていた。

取材◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE