前半は両者譲らず、0-0で後半へ。47分に名古屋のガブリエル・シャビエルに先制点を許した鹿島だが、ホームサポーターの後押しを受けて反撃する。72分に永木亮太のクロスを土居聖真が左足でゴールへ蹴り込んで同点。さらに、81分にはハーフウェイライン付近でボールを受けたレオ・シルバが緩急をつけたドリブルで独走し逆転ゴールを決め、首位の名古屋を下した。

上写真=安部は61分に途中出場し、同点ゴールを演出した(写真◎J.LEAGUE)

■2019年4月5日 J1リーグ第6節
鹿島 2-1 名古屋
得点者:(鹿)土居聖真、レオ・シルバ (名)ガブリエル・シャビエル

「絶対にジョーに入れてくると思った」

 61分に背番号10がピッチに入ってから11分後、鹿島に待望の同点ゴールが生まれた。

 72分、DF町田浩樹のインターセプトしたボールが左サイドの安部裕葵につながり、ペナルティーエリア付近まで侵入。ベクトルを中央に向け、右サイドの永木亮太にパスし、そのクロスをゴール前の土居聖真が左足でゴールへと流し込んだ。

「(土居)聖真くんが良いタイミングで決めてくれました。ここで負けたらさらに名古屋は勢いに乗るだろうし、本当に落とせない試合でした。勝って終われたのは大きい」(安部)

 同点ゴールの起点となった町田のインターセプトの直前、ボールを持っていたのは名古屋のDF宮原和也だった。鹿島の選手は前線に6人残っていただけに、宮原のパスがジョーに通っていればピンチを迎えていただろう。本来ならば「僕はプレスバックに行って、もっと低い位置にいたかもしれない」と安部は話すが、この場面では町田がボールを奪う確信があったという。

「マチくん(町田)が(ボールを)奪えるな、って分かっていたので、次のプレーへのイメージを持てました」とボールを受けるや否や、素早く攻撃に転じた。

 では、なぜそのような確信を持てたのか――。前半戦をベンチで見ていた安部は、冷静に名古屋のボールの進め方を見極めていた。

「相手(名古屋の選手)は技術があるので、(ボールを)奪った後に簡単に(ロングボールを)蹴ってこないで、縦パスなどを出してくる。だから、(72分の場面も)絶対にジョーに入れてくると思った」

 そして、実際にボールを奪った町田と、センターバックのコンビを組む犬飼智也について、こう続ける。

「(前半戦を)外から見ていても、やはりジョーは上手かった。だから、前半は苦しみましたけれど、マチくんとワンくん(犬飼)は(前半の)45分間で慣れて、後半は安心することができました。(同点ゴールの場面も町田が)ああいう対応をできるのは頼もしいです」

 安部の戦術眼と仲間への信頼が、同点ゴールの呼び水となり、逆転勝利へとつなげた。

取材◎小林康幸