浦和が終了間際に追いつき、引き分けに持ち込んだ。ACLを含めて公式戦で5戦負けなし。こう着した試合が動いたのは後半だった。0-0で迎えた75分、FC東京のカウンターを浴び、ディエゴ・オリヴェイラにゴールを献上。1点を追いかける終了間際、途中から出場した山中亮輔のパスを受けた森脇良太が同点弾を挙げた。浦和に勝ち点1をもたらしたゴールはいかにして生まれたのか--。

上写真=森脇にとって3年ぶりのゴールは値千金の同点弾となった(写真◎J.LEAGUE)

■2019年3月30日 J1リーグ第5節
浦和 1-1 FC東京
得点者:(浦)森脇良太 (F)ディエゴ・オリヴェイラ

「なんで、僕はあそこにいたんでしょう?」

【動画】浦和がFC東京に追いつきドロー! 森脇が終了間際に同点ゴール決める!

 するすると攻め上がっていた右サイドバックの森脇は、敵陣のペナルティーエリア内にぽっかりと空いたスペースを見逃せなかった。左サイドでクロスの名手、山中がボールを持つと、興梠慎三らFW陣が一斉にゴール前へ走り出す。本職の点取り屋たちが前に突っ込むなら、一歩タイミングを遅らせて、後ろへ。見事なとっさの判断だったが、本人はとぼけて笑うばかり。

「なんで、僕はあそこにいたんでしょうね?」

 それでも、チームメイトによるアシストの話が及ぶと、少しだけ真面目な表情を見せた。

「山中選手なら絶対にいいボールがくると思ったので、中に入りました。信頼している証です」

 リーグ戦では2016年4月1日以来、3年ぶりのゴール。「勝ってないので」と前置きした上で「気持ち良かったですね」とにんまり。言葉には実感がこもっていた。大勢の報道陣に囲まれると、サービス精神が旺盛になるのもご愛嬌。試合が終わっても、森脇劇場はしばらく続いた。

「たぶん、(山中と)目も合ったと思います。心の中で“ボールをくれ”と5回は叫びました」

 主役となった男の働きぶりは、終了間際の派手な仕事だけではない。今季、初めて臨んだ4バックの右サイドとしても安定したプレーを披露。1失点こそ喫したものの、力強いマークで相手を封じ、素早く背後のスペースもカバーしていた。広島時代から長年、3バックに馴染んだ32歳は「難しさもあるけど、やりやすさもある」と4バックに確かな手応えを得ていた。

取材◎杉園昌之 写真◎J.LEAGUE