上写真=大分のゴールを守る高木
写真◎J.LEAGUE

■2019年2月23日 J1リーグ第1節
鹿島 1-2 大分
得点者:(鹿)伊藤翔 (大)藤本憲明2

最後尾のパサー

 11分のシーンだった。大分がディフェンスラインでボールを回すと、バックパスを受けたGK高木駿から、最前線のFW藤本憲明へロングボールが渡る。相手DFを置き去りにした藤本が右足でシュートを放つも、鹿島のGKクォン・スンテにセーブされた。

「決めてくれよー」と心の中で叫んだのは、パスを出したGK高木だ。その後2ゴールを叩き込んで勝利の立役者となったエースFWに「今日は(文句を)言えないですね」と苦笑するも、もしもゴールが決まっていれば高木のアシストとなっていた。

「エデルソン(マンチェスター・C)が(ロングパスで)アシストしているので、自分もそれをやりたかったなぁ、と。同じ左利きだし、いつも意識しています」

 うまくパスが通ったことには「自分でもびっくりした」というものの、闇雲にロングボールを蹴ったわけではない。「(ショートパスを)回して、回してという状況になると、相手は前に重心がかかり、相手のDFラインも高くなって、背後に(大きな)スペースができる。そういうときにプレスをかいくぐって、裏(のスペース)へ一本のパスを通せれば、たとえ得点にならなくても、(形勢を)ひっくり返して自分たちが押し込むことができるし、相手を後ろ向きにさせた状態で守備することもできる。(ショートパスを)つないでいるなかで、相手の後ろを取ることは大事なので、そこは常に狙っています」と、プレーの選択はサッカーのセオリーに基づいている。両足のキック精度も高く、最後尾から長短のパスを配給できることは、チームの武器となっている。

「つなぎあってこそ(相手の)後ろを取れるのであって、(相手の)後ろを狙ってこそ(ショートパスを)つなげる。それを使い分けていきたい」

 J1開幕戦でも示した大分のポゼッションサッカーは、フィールドプレーヤーのみならず“最後尾のパサー”によっても支えられている。

取材◎小林康幸