上写真=アジアの頂点に立つことはできなかったが、チームの成長も実感していると森保監督は語った(写真◎福地和男)

 日本はアジアカップ決勝でカタールに1-3と完敗し、5度目の優勝を果たすことはできなかった。優勝候補の一つに挙げられ、対戦国からマークされる中でも成長しながら一つ一つ階段を上ってきた。準決勝のイラン戦の内容は開催地でも称賛を集めた。だが、優勝には手が届かなかった。森保一監督は、試合後に何を語ったのか。記者会見を振り返る。

選手を思い切ってプレーさせられなかった自分の責任

ーー試合を振り返って。
「まずは、優勝したカタール代表の選手とスタッフ、そしてカタール代表に関わる全ての方々におめでとうございますということをお伝えしたいと思います。そして試合ですが、我々は選手、スタッフ、チームとして、そして我々日本代表を応援してくださる方々みんな優勝を目標に、優勝を期待してということで、この大会に臨みました。優勝を目標にしていたアジアカップですので、優勝できなかったことを残念に思います。それとともに、優勝を期待してくださった方々に優勝をお届けできず申し訳ない気持ちでいます。
 しかしながら選手もスタッフも優勝しかないという思いと優勝を期待されているプレッシャーの中、日々最善の努力をしてくれたこと、そしてチームがこの大会を通して7試合、試合をすることができて成長できたことは、胸を張ってもらえればと思います。監督として、選手やスタッフが最大限の最善の努力をしてくれたが、結果に結びつけることができず、自分がもっと力をつけないといけないなという思いです。
 きょうは、勝ったチームが強いと思っていますので、カタール代表が強かったと思いますし、我々が足りなかったものを成長につなげられるようにしっかりと分析したいと思います」

ーー前半は5バックとのかみ合わせが悪く、相手を受けるような展開が続いていた。前半のうまく行かなかった理由と、どう立て直そうとしたかを聞かせてほしい。
「おっしゃるとおり、試合が始まってからミスマッチが起こる中、かみ合わせがうまく行かない序盤の時間帯で失点してしまって、難しいゲームになったと思っています。そういう意味では、カタール戦に対して、5バックというか、3バックでやってくる相手であることも想定に入れながら準備をしてきました。ですが、選手が思いきってプレーできる状態に準備できなかった自分の責任です。試合の途中から、相手の形にもある程度合わせながら、我々が攻撃に圧力をかけていけるようにしました。そこは徐々にできてきたと思いますが、2点失点してしまうと難しい展開になる、そういう試合だったと思います。1-2にしてくれたところは、その後に同点にできるというチャンスを作れたと思いますが、相手も強固な守備ができるチームなので、難しい展開と結果になってしまったと思います」

ーー優勝できなかったが1カ月間過ごして、収穫の多い大会だったのではないか。
「優勝を目標にしていた中で、思うような結果に導けなかったことは非常に残念に思います。ただ、収穫もおっしゃるとおりにあった大会だったと思っています。それは、日本代表チームとして、経験豊富な選手と浅い選手の融合を掲げ、チームのレベルアップを図るという部分においてです。国内キャンプから活動することができ、チームとしてもアジアカップという非常に厳しく難しい試合を7試合できて、1試合ごとに色々な戦い方をしながらステップアップしてきたというふうに思います。その積み上げについては、間違いなくこれからのチーム作りで、ベースとなる積み上げができたと思っています。
 チームとして活動する中で、経験の浅い選手に対して、経験豊富な選手たちが素晴らしい働きかけをしてくれて、若い選手たちを伸び伸びと思い切りプレーできるような環境作りをしてくれて、チームとして融合が図れたこと、特に若手にとってレベルアップにつながる経験ができたことは、ベテラン、経験豊富な選手に感謝したいし、若い選手たちが向上心や野心を持っていたからだと思いますので、この悔しさを糧に、さらに成長していってほしいと思います。チームとして活動してこれたこと、私が結果を負わなければいけないですが、選手やスタッフが日々どういうプロセスを踏んでくれているかということを見ていく立場でもあると思いますので、選手やスタッフがこれまでやってきた努力(に対して)は胸を張って、UAEをあとにしてほしいと思います」

ーーこれからカタールは(自国開催の)W杯に向けどういった戦いをしていくと思うか。きょうのカタールの戦いぶりに驚いたところはあったか。
「カタールについては非常に守備が堅いチームではありますが、攻撃もできるチームだと思って見ていたので、大きな驚きということはありませんでした。今日の試合も、堅い守備をしながらも、速攻でスピードのある攻撃、遅攻でボールを動かしながら攻撃できる非常にいいチームだった。W杯に向けて、チーム作りをうまく監督さんがやっていっている途中かなと思っています」

ーー日本は4回優勝していて期待されていたが、きょうは期待されていたパフォーマンスが出せなかった。なぜか? どう責任をとるのか?
「試合序盤のミスマッチが起きる中で、うまく試合の流れをつかめなかったことが結果に響いたと思います。以上です」

ーー日本代表にとって、一つの大会で7試合を戦うのは初めてだが、どのあたりにピークをもってくるつもりだったか。
「そうですね。7試合目の試合でしたけど、どこにピークを持ってくるのかということは、特に考えていませんでした。初戦で、まずチームの状態をできるだけいいものにしていくということ。しかしながら、この大会に臨むにあたって国内組は12月にほとんどの選手が初旬からオフという状態で、ヨーロッパ組がウインターブレイクで合流してくる。大会直前にイングランドから、残念ながら大会を戦えませんでしたが、ポルトガルから中島翔哉がUAEで合流して、という部分。初戦にできるだけいい状態を作りながら、試合を戦いながら徐々にチームのコンディションを上げていく、戦術的な理解度を高めていく深めていくことができればと思っていました。成長しながら結果を出すというところで、チームでやることをトライしてくれて、うまくいかないところもたくさんありましたが、そこをしっかり修正しながら、チームの力として積み上げて、この7試合目に向かってこれたと思っています」

ーーこの先、どうやってW杯で8強に行くのか。世界での戦いを見据えた上で、出た課題はあるか?
「全てを上げていかなければいけない。チームとしての連係連動もそうですし、個の力も選手にはさらに上げていってもらえればと思います。きょうの戦いの中で、2-0になって引かれた相手に(対して)点を取りに行ける。相手がスペースを与えてくれない中で、得点を奪うことはできましたが、形は多くの形が作れたというふうに思いますが、最後相手をこじ開けるには至らなかった。引かれた相手をこじ開けるだけの連係連動の精度を高めなければいけないし、今大会は、イラン戦は2-0から3-0にカウンターで得点できましたが、リードした展開、リードしていなかったとしても、速攻で得点を決める、あるいはビッグチャンスとして得点の機会を作るというところ。なかなかできそうで、できなかった。速攻も遅攻もクオリティーを上げていかなけれないけない。
 守備も、きょうの試合の中でミスマッチが起きたとしても、最後のところでどうやって止めるかという部分の、特に2点目のところなどは、相手の6番(ハテーム)が左足のミドルを持っているのは韓国戦でも見ているし、スカウティングできていたところでした。そこをうまく押し込まれていたとしても、守りきれるようにという部分は、チームとしてさらにやっていければ。細部の部分を詰めていければと思います」

写真◎福地和男