上写真=決勝のカタール戦に向けてアブダビで練習する日本代表(写真◎福地和男)

 1月30日、日本代表はアブダビで練習を行なった。だが、そこに遠藤航の姿はなかった。準決勝のイラン戦で左太腿裏を痛め、この日はホテルで静養。決勝までに完全に回復するのは難しく、カタールとの決勝には塩谷司の出場が濃厚となった。

バランスに気をつけたい(塩谷)

 遠藤の負傷により、決勝は塩谷がボランチの一角を占める可能性が高い。先発すれば、グループステージ第3節のウズベキスタン戦以来。あの衝撃のミドルシュートをたたき込んだ試合だ。

「(決勝に)出ることになれば、自分にとっては今後、日本代表に残っていくなかで大事に試合になると思う。100パーセント以上を出したい」(塩谷)

 イラン戦でも、負傷した遠藤に代わって60分から30分間プレーした。そのときにドイスボランチを組んだ柴崎岳から「お互いにチャンスがあれば出て行こう」と言われたという。遠藤の回復が間に合わないことを想定すれば、イラン戦に途中から出場し、柴崎とともにプレーしたことは大きかった。

 決勝で先に失点するとゲームそのものが難しくなると塩谷は指摘し、攻守の「バランスに気をつけたい」とカタール戦の展望を語っている。そして、コンビを組むであろう柴崎は「コミュニケーションをよく取ることが大事だと思います。航にしろ、シオさん(塩谷)にしろ、どんな人と組むにしても、よく話してコミュニケーションを取ることは(普段から)やっていることですし、ボランチ2人の連係というのは試合の中で非常に大事になると思うので、誰が出てもいいようにしたいと思います」と、塩谷とのコンビにも不安がない様子だった。

 とりわけイラン戦で顕著だったが、柴崎と遠藤のコンビの場合は、攻撃の局面で縦への意識(深さ)と横への展開(幅)を考えながら、うまくプレーしていた。守備ではセカンドボールの回収に気を配り、相手の二次攻撃を何度も封じている。
 塩谷にも同様のプレーを求められるが、それに加えて、自らの特長を出す機会があるかもしれない。ミドルシュートという武器である。
 カタールはここまで大会最多の16得点を挙げ、クリーンシートも6試合。つまりは無失点だ。攻守のバランスに優れているのは明白だが、戦い方に幅がある。韓国では割り切って守備に比重を置き、5バックを形成して守備を固めた。首尾よくカウンターで得点を狙う現実的な戦い方を選択している。結果は周知のとおり、まんまと1-0で勝利を収めた。

 おそらく日本戦でも、同様の戦い方が予想される。引きこもる相手に有効な手段となるのは、ミドルシュート。エリアの外からもゴールを射程距離に収める塩谷の持ち味が生きる。

 柴崎が配球で揺さぶり、塩谷がミドルで相手ゴールを脅かす。守備の連係やバランスについてもイラン戦の30分間はスムーズだった。

「誰が出ても問題なくプレーできるように」(森保監督)

 決勝のピッチに立つドイスボランチが、そう考えてチーム作りを進めてきた指揮官の考えをピッチで示すことになる。

取材◎佐藤 景 写真◎福地和男