上写真=練習開始前に、選手に声をかける森保監督(写真◎福地和男)

 1月28日、日本時間23時からアルアインのハッザビン・ザイードスタジアムでアジアカップ準決勝、日本対イランが行なわれる。アジア最強と言われるイランに対し、日本はどんな戦いを見せるのか。前日会見に臨んだ森保一監督は普段と変わらず、「目の前の試合に勝利する」ために準備すると語った。

良い準備ができた

「ベトナム戦から中3日ということで、選手たちは非常に落ち着いていて、良い準備ができていると思っています。今日これから、もう一度、試合前の準備を行なって、明日、いい状態で臨めるようにしたいと思います」

 質疑応答に入る前、会見の冒頭に森保監督は現在のチーム状態について、こう述べた。中2日で臨んだベトナム戦を乗り越えてたどり着いた準決勝。アジア最強国との対戦を前にして、チーム状態はいいという。この会見前日に、槙野智章が体調不良で練習を回避したが、この日は22人(青山敏弘は大会途中で負傷のため離脱)がそろってトレーニングを行なった。ウォーミングアップ中には時折、笑顔が見られるなど、チームの雰囲気もいい。緊張感はしっかりありつつも、リラックスしている様子が垣間見えた。指揮官が言う通り、いい準備はできているようだ。

 外国の記者から、ここまでの守備的な戦いぶりについて質問が飛んだ。日本の戦いぶりが、堅守を武器にヨーロッパを制したEURO2004のギリシャのようだと。森保監督は言った。

「(イラン戦が)難しい戦いになるというのは覚悟しています。チームもまだまだ完成されたチームではなく、未完成で、成長しながら結果をだしていこうというチームです。選手たちが1試合1試合、結果を出しながら色んな事を学び、チームとしてステップアップできている。今大会では、それを選手たちがやってくれていると思います。僅差での勝利、すべて1点差で勝っていることについては、まずは、どんな内容のゲームであっても勝利する、選手たちが勝ちにこだわってしぶとく勝つのが非常に大切な部分だと思っています。その中でも、われわれがやろうとしているところは、選手がトライしてくれています。明日のイラン戦でも、思い切ってトライしてほしいと思いますし、アグレッシブに戦ってほしいと思います。難しい時間帯はたくさんあると思いますので、その中で、我慢強く戦ってほしいと思っています」

 ここまで5試合すべてが1点差ゲーム。記録上は辛勝と映るが、その戦い方には幅もあった。ボールを握ったベトナム戦。ボールを握られたサウジアラビア戦。中央に人を集めて攻撃した前半から一転して後半はワイドな展開へと比重を変えて勝ち切ったトルクメニスタン戦。チームは着実に成長しているとの実感が、指揮官にはあるようだ。その上でイラン戦はどう戦うのか。

「イランはアジアでFIFAランクでトップですし、強いチームだなと思っています。それがこのアジアカップでもデータとして表れているのかな、と思っています(12得点無失点というイランの成績についての感想を聞かれて)。しかしながら、われわれはどんな相手に対しても敬意を払い、その上でわれわれが持てる力を、どれだけ出せるかということだと思っています。イランも手ごわいチームだと思いますが、自分たちがしっかり勝利をつかみとるために、チャンレンジしたいと思いますし、選手が思い切ってプレーしてほしいと思います」

 フィジカル的にも優れるイランに勝つために必要なこととして指揮官は「サッカーはゴールを奪い合うスポーツだと思いますが、その前にボールを奪い合うスポーツということ。選手たちには球際の部分でしっかりとバトルしてもらえればと思っています。そこからわれわれは攻守のやるべきことを、やりたいと思っています」と、球際バトルに果敢に挑み、勝ち切ることが勝利に必要な前提になると話した。

 イランのボールを奪う力は言うまでもなく今大会ナンバーワンだろう。その上、運動量も豊富。とりわけ日本の最終ラインは注意が必要になる。ハイプレスによるハイプレッシャーを回避できなければ、日本は自陣に押し込めれ、仮にショートカウンターでも決められようものなら、相手を一気に調子づかせることになる。日本も徐々に完成度を上げてきているとはいえ、まだまだ土台を築いている段階。完成度という点では、ロシアW杯からほとんど選手が変わっていないイランに分がある。

「しっかり球際でバトルするところ、相手のプレッシャーをかいくぐって、プレス回避できるように、攻撃のところもボールを握れるようにチャレンジしていければと思いますし、選手にもチャレンジしてもらいたいと思います。しかしながら、試合の展開はどうなるかわからない。サウジアラビア戦もわれわれが狙いとすることがなかなかできない中、そして先制点をいい形で奪えた中で、どうやったらその試合をものにできるかということを、(選手が)賢く考えてくれてプレーしてくれたと思っています。トライすべきところは選手にトライしてもらい、試合の流れをしっかりとみんなで感じながら意思統一をして、戦えればと思います」

 勝利を手にして決勝に進めるか。戦術的なアプローチについて多くを語らないのは当然だが、指揮官が常々言っている「変わらないサッカーの原理原則」の部分で大きく劣るようでは勝負にならない。球際で戦うこと。相手よりも走ること。その上で、何にトライするか。トライできるか。

【記事】森保監督も出場した1992年のアジアカップ

 1992年のアジアカップ、グループステージ第3戦のイラン戦。日本は勝たなければ次に進めない、勝利が絶対条件だったゲームで勝ち切った。決勝ゴールを挙げたカズから「魂込めました、足に」との名言が生まれた伝説の試合だ。その試合では森保監督もプレーしていた。

 会見で当時の質問が出ると、森保監督は「いま記者さんから言われて、1992年のアジアカップ、広島で行なわれたアジアカップのことを思い出しました。カズさんがシュートシーンを鮮明に蘇ってきました。そういう戦いができる明日の試合、選手にはそういう戦いをしてほしいなと思っています」と話した。

「あの当時の日本代表といまの日本代表は(状況が)大きく違うと思っています。ただ同じなのは、チーム一丸となって、支え合って、絆をもって戦っていこうという雰囲気。それは同じだなと思います」

 最強イランとの準決勝は、日本時間の今夜23時にキックオフされる。

写真◎福地和男