上写真=冨安が挙げた1点を守り切り、日本がサウジアラビアを下してベスト8に進んだ(写真◎福地和男)

■AFCアジアカップUAE2019 ラウンド16
 日本 1-0 サウジアラビア
 得点*(日)冨安健洋

 1月21日、日本は決勝トーナメント1回戦に臨み、サウジアラビアを1-0で下して、準々決勝進出を決めた。その戦い方はこれまでの森保ジャパンのイメージを一新するものだったと言えるかもしれない。大別すれば、アクションを起こすのではなく、リアクション。サンフレッチェ広島時代に、勝負に徹するリアリストとして知られた指揮官の一面が見えた、そんな試合だった。

日本のボール支配率は23・7%

 怖いのは先に失点することだった。ほしいのは何より先制点だった。日本は徹底したスカウティングで、サウジアラビアの弱点をつかんでいた。それはセットプレー時の緩さであり、中央に偏りがちの攻め。

 長友は言う。

「相手を分析して、相手がやっぱりポゼッションしたかったら中に人数をかけてポゼッションしてくる。そういう中で、試合前も(ボールを)にぎられる部分は問題ない。最終的なところで、しっかりと体を張って守れれば問題ないと。あと相手のFWに速い選手がいたので、そこの裏のケア、その選手にやらせないというところを心掛けて。集中した良い試合だったと思います」

 日本のボール支配率は23・7%。アジアのチーム相手にこれほどまでに支配率が低い試合は過去にもほとんど例がない。ただし、ボールを握られたのではない。意図的に「握らせた」と長友は言った。

「ここまで(ボールを)握られるというのはないんじゃないですか。僕らとしては試合の中で握らせているという状況で、全然メンタル的に崩れることはなかったので。最終的な怖さが相手はなかった。そこは集中的にケアできれば問題ないという中で、みんなで話し合っていました。もちろん、もうちょっとポゼッションできればよかったですけど。ミスも多かったし、つなげるところクリアしてしまったりとか、そういう部分もありましたけど、まあポゼッションでサッカーをするわけではないので」

 日本が先制したことで、その傾向はいっそう強まった。「練習してきた」(柴崎岳)セットプレーで日本が均衡を破ったのは20分。左CKの場面で柴崎が右足で蹴ったボールは相手GKが飛び出せない場所へと送られ、冨安健洋の打点の高いヘッドが決まった。

「まあ、うれしかったですね。(それ以外には)試合の序盤でしたし、得点を取ったあとの5分、10分集中して切らさないこと。ゲームが終わるまで集中を切らさないことを意識していました」

 二十歳のCBの代表初ゴールで1-0とした日本は、相手にボールを握られる展開を受け入れ、機を見てカウンターを仕掛ける戦い方へと割り切ってシフトして、相手の攻撃をいなして、かわして、時計の針を進めていった。

自主的な判断で守備を調整

 それでも守備をやり続けるのは相手に動され続けることであり、疲労の蓄積を早めてしまう。最初は集中していた守備も、疲労の蓄積によって、ほころびを見せるというのが、これまでの日本だった。
 だが、この日は違った。状況に応じて、守り方を調整し、サウジアラビアを封じ込んでいく。例えば、原口元気はこう証言している。前半に水を飲みに来た原口にベンチの乾貴士が駆け寄った場面に触れながら。

「守備のやり方について、貴士くん的には相手のサイドバックに付ききるんじゃなくて、ある程度、もう少し前(=高い位置)でカバーしたほうがいいんじゃないかと言っていた。でも、けっこう前半に関しては、サイドから一本(のパス)でスパンと裏に、僕が付いているサイドバックに入るシーンがあった。だから、それが僕はちょっと怖いなと思ったので、引き気味に彼(=相手のSB)に付く形を取っていた。そこは両方やり方があると思うんですけど、1点勝っているということもあって、僕はそのやり方をしたし、後半に関しても佑都くんと、ハーフタイムに貴士くんとも話したけど、僕が安パイなほうを取ったというのがあります」

 ピッチ上のチームメイト、ベンチから見つめる仲間、そして最後は自身の判断から守備の最適解を導き出し、実行していた。それは殊勲のゴールを挙げた冨安にしても中盤で危険地域をつぶした柴崎にしても遠藤航にしても同じだ。ピッチで体感している現実に則して選手同士が解決策を立てることを指揮官も歓迎している。サウジアラビア戦では、その自発的な修正力が見られた。

「森保さんはどちらかというと、自分たちのサッカーをやるのは大前提で、でもうまくいかないことも頭に入れているし、そういうときにどうするかについて、『こういう風にしろ』というのではなくて、選手同士で話をしてやっていってほしいという感じ。そこは良いコミュニケーションを取れていると思うし、僕もやっぱりU-23やアジアを戦って、勝つのは簡単じゃないと(分かっている)。その経験は今回生きていると思うし、そういうアジアでの戦い方を少しずつ変えていきながら、理想を追い求めるのと、現実を見ていくという部分で、うまく割り切れていると思います」(遠藤)

 狙い通りの形でゲームをスタートさせ、狙い通りに先制して、狙い通り守り切ってネクストステージの扉を開いた。それは自らのサッカーに縛られて理想ばかりを追うことはなく、負傷者や欠場者がいる中で、何が最もうまくいくのかを現実的に考えて実行した結果だ。

 サウジアラビア戦が、これまでの森保ジャパンの前面に出ていたイメージとは少し異なる戦い方だったのは確かだろう。ただ、現実をしっかり見て、勝ち切るのもまた、サンフレッチェ広島時代に3度リーグ制覇を成し遂げた森保監督の一面だった。

 準々決勝は中2日でベトナムと対戦する(1月24日)。疲労の蓄積を考えれば、ある程度選手を入れ替えるはずだ。そのための準備もまた、指揮官はしっかりやってきた。グループステージ第3戦でプレーした選手たちの多くが、ピッチに立つことになるだろう。もちろん、それも勝つための現実的な選択ということになる。

取材◎佐藤 景 写真◎福地和男