上写真=決勝では途中交代し、悔しさを味わうことになったジャーメイン良(写真◎高原由佳)
浦和に敗れて初優勝はならなかったが、仙台は今大会で多くのものを手にしたと言える。とりわけ若い選手たちが成長を示し、大舞台を経験したことは大きい。自らの得点で決勝進出に貢献したジャーメイン良も、天皇杯で輝いた若手の一人。クラブの未来を大いに期待させる存在となった。
指揮官曰く「カメのようなスピードで成長してきた」
何もできなかった。仙台の点取り屋として天皇杯の快進撃を支えた新人のジャーメイン良は、大舞台で力のなさを痛感していた。
「自分の良さを出せなかった。パスを引き出せず、前も向かせてもらえなかった」
4回戦から3試合連続ゴールを挙げ、クラブ史上初のファイナルでも爆発が期待された。しかし、いざピッチに立つと、持ち前のスピードを生かせず、シュートも0本。日本代表のDF槙野智章にマークにつかれ、仕事らしい仕事もできず、67分に途中交代した。
「決勝で何ができるかが大事。こういう舞台でも活躍できないと」
言葉には悔しさがにじんでいた。
ただ、大会にはしっかり爪痕を残した。準決勝の山形(J2)との「みちのくダービー」では、チームを初の決勝に導く貴重なゴールをマーク。流通経済大から今季加入したばかりのルーキーは居残り練習でコーチに鍛えられ、技術を向上させてきた。もともとゴールに向かうスピードはピカイチ。思い切りの良いシュートも光るものがある。荒削りな分、伸びしろはたっぷり。渡邉晋監督は将来性を見込んで、冗談交じりに言う。
「3歩進んで、2歩後退している。カメのようなスピードで成長してきた」
本人も足りない部分は自覚している。来季に向けて、「精神的にもっと成長しないといけない」と力を込めた。決勝の敗戦を糧に大きくなることを誓った。
取材◎杉園昌之 写真◎福地和男、高原由佳