上写真=J1参入プレーオフ2回戦で決勝点を挙げたドウグラス・ヴィエイラ

 12月2日、J1参入プレーオフ2回戦が行なわれ、J2リーグ3位の横浜FCと6位の東京ヴェルディが激突。順位表で上の横浜FCのホームでの対戦は、1-0で東京Vが勝利を収め、8日にJ1リーグ16位のジュビロ磐田と『入れ替え戦』を戦うことになった。

■12月2日 J1参入プレーオフ2回戦
 横浜FC 0-1 東京V
 得点:(東)ドウグラス・ヴィエイラ

2つの下克上を達成

【動画】東京Vが横浜FCを破りJ1参入PO決勝へ! ドウグラス・ヴィエイラが劇的弾!

 試合は序盤から互いに譲らず、攻守が激しく入れ替わる前半が0-0で終わり、迎えた後半。先に動いたのは、勝たなければJ1参入プレーオフ決定戦に進めない東京ヴェルディだった。
 49分、李栄直に代えてレアンドロ、そして井上潮音に代えて梶川諒太を投入。この『2枚替え』を機に、東京Vが攻勢を強めていった。レアンドロと梶川が縦横に積極的にボールを動かし、51分にはレアンドロがファウルを受けて、直接FKの機会を手にする。だが、佐藤優平が狙ったボールはゴール左隅をとらえたものの、横浜FCの守護神・南雄太に弾かれた。

 東京Vは選手交代で流れをつかみかけた。しかし、横浜FCは自陣ゴール前の守備も堅い。カルフィン・ヨンアピン、田代真一、川﨑裕大の3バックとGK南という守備セットが、東京Vの選手たちの前に立ちはだかった。引き分けでネクストステージに進める横浜FCは、リスク管理を徹底しつつ、効果的にカウンターを放っていく。

 局面で体を張り、ボールを奪い合い、マイボールになれば、敵のゴール前に一斉に走り込む。80分を過ぎ、より一層目まぐるしく攻守が入れ替わるオープンな状況が訪れても、両チームともに、死力を尽くしてピッチを駆った。

 結局、0-0のまま90分を経過。そして7分と表示されたアディショナルタイムの2分が経過したとき、東京VのCB井林章が背後に出されたボールの処理をミスしてしまう。横浜FCにビッグチャンスが訪れた。
 抜け出した瀬沼優司が飛び出してきた相手GK上福元直人が触るよりも早くシュートを放つ。だが、ゴールはわずかに左の逸れてしまった。

 絶好機を逃した横浜FCだが、そのまま試合を終えればJ1参入決定戦進出、というミッションは達成できる。焦る必要はなかった。ところが、決定的なチャンスを逸したあとに大きなピンチが訪れるのがサッカーの常なのか。アディショナルタイムの5分が経過したときだった。今度は直前に胆を冷やした東京Vに好機が訪れる。
 右CKの場面。佐藤優平が蹴ったボールに、スクランブルでゴール前に上がっていたGK上福元がフリーで飛び込んで頭を合わせた。一度はGK南に弾かれたが、そのこぼれ球をドウグラス・ヴィエイラが横浜FC守備陣よりも早く反応して押し込み、ついに東京Vがゴールをこじ開けた。そして、そのまま試合は終了――。

 J2リーグ6位の東京Vは、J1参入プレーオフ1回戦で5位の大宮アルディージャを破り、そしてこの日の2回戦で3位の横浜FCも下した。勝つことでしか、次の扉を開くことができない厳しい状況ながら、いずれも敵地で2つの下克上を成し遂げた。

「この試合は非常に難しい試合だった。ただ、われわれは自分たちの可能性を信じ続けて戦った。幸い、私にゴールの機会が巡ってきたが、この結果は、われわれが一つになって戦ってきた証。プレーオフを戦う中でわれわれのチーム力もアップしていると感じる。(次の磐田戦も)相手をしっかりリスペクトし、シーズン初めからやり続けてきたことを出してJ1昇格をつかみ取りたい」(ドウグラス・ヴィエイラ)

 昨日のJ1リーグ最終戦で、J1参入プレーオフ決定戦に出場するチームが磐田に決まったのも、アディショナルタイムだった。『入れ替え戦』に出場チームするJ2代表が決まったのも、90+6分のゴール。どちらの試合も、最後の最後まで結末が分からない、サッカーの怖さを知らしめるような展開だった。

 2014年のプレーオフ準決勝で、モンテディオ山形のGK山岸範宏(当時)が、同じくアディショナルタイムにヘディングを決めて(山岸は直接ゴールインだったが)、決勝に進出したケースがあった(当時のレギュレーション)。GKの攻撃参加で相手のマークを混乱させ、決定的な『仕事』をやってのけたのは、今回も同じだ。ちなみにその2014年は、6位の山形が2つの下克上ののちに決勝で3位のジェフユナイテッド千葉を下し、J1昇格を果たしている。

 同じように勝ち上がった東京Vも、3つ目の下克上を成し遂げることができるか。運命の一戦は、12月8日14時、ヤマハスタジアムでキックオフとなる。

写真◎J.LEAGUE PHOTOS