上写真=山口への加入が内定している小野原
写真◎飯嶋玲子/関東大学サッカー連盟

「まだ、もっと走れる」

 一本気な男は丸刈り頭を手でさすり、髪の長さを確かめていた。
「今は1センチくらいですね。これが2センチになると気持ちが悪いんで」

 小学校1年生の頃から硬派なスタイルを一度も変えたことはない。思春期を迎えて、周囲の友人が長髪にしても、流されることはなかった。プロ入りしても、こだわりの髪型を貫くつもりだ。

 ワイルドなのは外見だけではない。ブラックバスを釣れば、手際よくさばいてぺろりと平らげる。ウシガエルを捕まえると、ニンニクをすり込み、からっと揚げて腹を満たす。「カエルの足は本当にうまい」とニヤリ。内定している山口では名物のフグを釣って、自らのまな板にのせたいという。冗談交じりに、フグの調理師免許の取得も考えていることを明かしてくれた。

 無骨な印象は、ピッチに入っても変わらない。ハードワークをいとわず、球際にめっぽう強い。止めて、蹴るの基本技術もしっかりしている。今春のデンソーカップは関東大学選抜Bの一員として参加し、大会MVPを獲得。Jクラブのスカウト陣も称賛した。
「中盤でよく働き、ボールを奪える。チームには一人、欲しい選手」

 本人はプロの評価を聞いても、腑に落ちていない。ヒザの半月板を痛めており、思うように動けなかったのだ。「100パーセントでプレーできなかった。走れないし、蹴れないし、要所で働いただけ」と苦笑する。

 今季はケガを押して関東大学リーグでプレーを続けるつもりだった。しかし、山口のメディカルチェックで引っかかり、9月下旬に渋々手術を受けることに。後期の大学リーグ出場は、絶望的な状況となっている。
「無理すればプレーできたので、手術をしたくなかった。チームに貢献したかったんです。中野(雄二)監督には相当、迷惑をかけてきましたから」

 感謝の念をピッチで示したかったのだ。大学で成長したことも実感している。磐田U−18からトップチームに昇格できず、一度はサッカーを辞めるつもりだったが、流経大に拾われ、鍛え直された。高校3年時はFW。大学の1、2年生でCB、サイドバックを経験。そして3年生になり、新境地のボランチで輝き、プロの道が拓けた。

 磐田U−18時代を含め、大学関係者、両親など、多くの人の支えがあり、ここまできたという。感謝を忘れない男はプロでの目標をはっきりと口にする。

「常に試合に出ること。恩返しがしたいんです。お世話になった人たちに僕のプレーを見てもらいたい」

取材◎杉園昌之

小野原和哉[流通経済大4年/MF/山口加入内定]
おのはら・かずや◎1996年4月19日生まれ。大阪府出身。磐田U-15、磐田U-18で育ち、流通経済大へ。18年春のデンソーカップでは関東選抜Bとして出場し、大会MVPを獲得した。175cm、72kg