上写真=大分スポーツ公園総合競技場で前日会見を行なった森保一監督(写真◎JFA)

 森保一監督率いる日本代表は11月シリーズで、16日にベネズエラ、20日にキルギスと対戦する。来年1月のアジアカップ前に行なわれる最後の『テストマッチ』。そこで指揮官は何をテストするのか。

ベネズエラ戦はウルグアイ戦のメンバーがベース

 11月7日の代表メンバー発表の場で、森保監督は今回の2試合の位置づけについて言及した。
 
「アジアの戦い方とアジア以外の諸国との戦い方はまったく違う対応力が求められると思います。相手を崩していくためにどういう戦い方をしたらいいかを学べる、いいシミュレーションになると思います」

 ここで言う「アジアの戦い方」とは、日本よりも格下との対戦で、相手が守備に軸足を置くケースでの戦い方を指す。過去に日本が自陣に引きこもる相手を攻めあぐねた例は一度や二度ではない。相手の人海戦術を前に、押し込みながらも攻めきれず…という試合を、アジアの舞台で何度も経験してきた。
 一方で「アジア以外の諸国との戦い」とは、格上や同格のチームとの戦いで、互いに攻め合う時間も、時に日本が自陣に押し込まれる時間もあるゲームを指している。

 柔軟に戦える集団となるべく、チームづくりを進める森保監督にとって、異なる戦い方が想定される今回の2つの対戦は、確かに「いいシミュレーション」になるだろう。過去3戦と同様にアグレッシブに戦うことを前提にしつつ、対応力を発揮して勝利をつかめるかどうか。そこに11月シリーズのポイントがある。
  
 まず、ベネズエラ戦について。前日会見でこれまで通り招集したメンバーに可能な限り出場機会を与えたいと前置きした上で「今のところウルグアイ戦のメンバーをベースに戦っていきたいと思います。練習を見て、練習後には変わっているかもしれませんが、今のところはそう思っています」と、森保監督は話した。攻撃的な姿勢と連動性で評価を高めたウルグアイ戦(〇4-3)に出場したメンバーの起用を示唆したのだ。それは現状のベストで臨むということだろう。
 10月16日のウルグアイ戦に先発したメンバーは以下の通り(カッコは交代選手)。
 GK東口順昭、DF酒井宏樹、三浦弦太、吉田麻也、長友佑都、MF柴崎岳(←74分、青山敏弘)、遠藤航、堂安律、南野拓実、中島翔哉(←87分、原口元気)、FW大迫勇也。

 今回は長友が不在のため、左サイドバックには9月シリーズ、10月シリーズともに招集された佐々木翔が起用されると予想されるが、このメンバーが現代表の『コア』と見ていいだろう。つまり、アジアカップのメンバー入りの可能性が高い選手たちということになる。

 このコアメンバー中心で臨むベネズエラ戦では、ウルグアイ戦で示した現チームの特長である攻撃のコンビネーションが通用するのかどうか。さらに失点を招いたセットプレー時の守りや呼吸が合わずミスにつながった守備が改善されているのかどうかが、チェックポイントと言えそうだ。

 一方でキルギス戦については、森保体制で臨んだ過去3試合がいずれの試合とも趣が異なり、守る相手をいかに崩すかという点が注目される。

「これまでのキリンチャレンジカップの試合では、相手のことはもちろん分析したうえで、自分たちの良さを出していこうとしてきました。それはこれからも変わりません。ただ、アジアでの戦いと、アジア以外に出ていったときの戦い方の状況が変わるかもしれないことは選手も分かっていると思います。選択肢を持って戦う、相手がどう出てきても、我々に対策をしてきても、それに対応力を持って戦いに臨むことは選手に伝えています。
 相手が前からプレッシャーをかけてきたとしても、引いて守ったとしても、常に連係連動の意識を持ってプレーしていれば、そこは相手の出方を見ながら相手の嫌がる攻撃をできるのかな、と。カウンターだけの練習とか、何か一つのことを練習するというのはやっていません。チームのコンセプトを浸透させることを基本的にやっていますが、相手が対応してきても、そこで慌てることなく試合を進められるようにとは選手に働きかけています。今回の2試合で相手が我々に対してどういう戦い方で挑んでくるか分かりませんけど、相手がどういう戦い方を仕掛けてきても選手が自信を持って臨めるように準備したいと思います」

 もちろん、相手のあることで、想定通りに事が運ばないケースもあり得る。キルギスが日本の持ち味を消すように守備を固めてくるとは限らないからだ(もちろん、ベネズエラが引いて構えることもないとは言えない)。ただ、森保監督はそうした想定外のことにも、対処できるチームを目指している。それこそが指揮官が繰り返し口にする「対応力をつけること」に他ならない。

 アジアカップに向けた準備の色合いが、これまでよりも濃くなるであろう11月シリーズ。森保ジャパンは、どんな収穫を得るのか。ベネズエラ戦は今夜、19時30分にキックオフされる。

文◎佐藤景 写真◎JFA