これまでの2試合と同様に、前日会見に登場した西野監督は非常に落ち着いていた(写真◎福地和男/JMPA)

 2戦を終えて1勝1分け、グループHの首位に立つ日本が今夜、決勝トーナメント1回戦進出をかけてポーランドと激突する。前日会見に臨んだ西野朗監督は、日本が優位な状況にあるとはいえ、「タフな試合になる」と気を引き締めた。

W杯に消化試合はない

 会見に登場した西野朗監督は、これまでの2試合と同様に落ち着いていた。翻訳用のイヤフォンのつけ方が分からず、同席する選手(この日は川島永嗣)につけ方を尋ねる姿も同じ。リラックスした表情で、各国記者の質問に答えていった。

 まず、ポーランドはすでに2敗してグループステージ敗退が決まっていることは、決勝トーナメント進出を目指す日本にとって、どのような影響があるのかという問いについて。

「ワールドカップに消化試合はあり得ない。敗退が決まっている相手ですが、何とか日本に一矢と思っているでしょうし、何としても勝利という気持ちで、明日、強いポーランドがいると思う。それ以上のスピリットを持って戦わなければいけないと思います」
 
 何も、変わらない。これまで同様に勝利を目指すーー。
 それが西野監督の答えだった。ポーランド戦は引き分け以上、あるいは敗れた場合でもセネガル対コロンビア戦でセネガルが勝利すれば、日本のネクストステージ進出が決まる。そんな優位な状況にあっても、指揮官はこれまでと同じスタンスで勝ちに行くと言い切った。

「われわれもここ2試合、ポイントを取れたという強い自信もありますので、しっかりボールを味方につけて、日本チームらしい、サッカーを引き続きやりたい。さらにクオリティの高いゲームをやりたい。決して崩せない相手ではないと思っているので、しっかり選手のコンセプトを合わせて。ボールを生かし、人もボールも動く、日本らしいクイックネスをもって、戦いたいと思います」
 
 戦い方を極端に変えないと話す指揮官だが、気になるのはヴォルゴグラードの暑さへの対応だ。35度以上の気温で湿気もロシアの他会場に比べて高い中で、これまで同様の運動量を保つことは難しい。まして前回の試合から中3日での戦いになる。選手の入れ替えやコンディション調整、環境への対応についてはどんな対策を立てているのか。

「(ここまでの2戦で)走行距離はチームで100kmそこそこ。国内の試合ですと110から120kmは普通です。(重要なのは)押し込んだ第1戦や第2戦を見ても、クオリティの問題。スプリントの回数にしても、同時にスプリントを使ったりとか、動く質という面で無駄に動いていない。明日は、こういう(暑い)コンディションですので、ボールをしっかり使う、走らせることをしたい。疲れを知らないボールですので、有効に使いたいと思います。
 いまはやはり選手が攻守で決断が早かったり、勝機とみるときに全体が同じ形で走っていったり、共通した戦術の中で動きが取れている。その意味で、無駄がないと思います。明日もそういう形で進まないと、後半かなり疲弊してくると思います。日本の選手は持久性に関して、かなり高い能力を持っています、粘り強くというか、戦況を見ながら試合を進めていかなければならない。
 それから、他会場を気にしたくはないですし、選手に伝えるつもりもないんですけど、どこからか入ってしまうと思います。ただ、それによって選手の動きが変わらないようにコントロールしたいと思います。だから非常にデリケートな3戦目になる。ベンチワークも重要になってくると思っています」

「ボールは疲れない」から「ボールを走らせる」というヨハン・クライフの金言を、西野監督は会見で口にした。酷暑が予想される中、運動量を落ちることを前提に「ボールを走らせる」というわけだ。また、他会場の結果によって選手のプレーの質が変わらないように、コントロールしたいとも話した。
 ピッチ内外で起こりうるすべてのことに考えを巡らせ、その対策を練り、そしてここまでは結果につなげてきた。このサイクルを、重要なポーランド戦でも繰り返させるかどうかーー。
 
 日本時間の28日の23時。日本代表は、2010年大会以来の16強入りをかけて、ポーランド戦に臨む。
 
取材◎佐藤 景 写真◎福地和男/JMPA